三畳紀の後期に存在した「雨の時代」
カーニアン多雨事象が起きたのは約2億3400万〜2億3200万年前の三畳紀後期のことです。
三畳紀の地球はそれ以前のペルム紀に引き続いて、かなり高温で乾燥した環境にありました。
当時、地球上の大陸は今みたいにバラバラには分かれてはおらず、一つに固まって超大陸を形成していました。
これを「パンゲア大陸」と呼びます。
パンゲア大陸を取り囲む巨大な海は「パンサラッサ海」と呼ばれ、パンゲア大陸の沿岸部には降雨をもたらしていました。
しかし沿岸部を除くと、広大無辺な内陸部では雨がほとんど降っておらず、高温で乾燥した気候が続いていたのです。
パンゲア大陸はその後、約1億8000万年前のジュラ紀になってから、北はローラシア大陸、南はゴンドワナ大陸へと分裂していきます。
地質学者たちはその時代になるまで大陸の高温乾燥状態は続いていたと考えていました。
ところが1989年になって新たな事実が見つかります。
イギリスの地質学者がヨーロッパに分布する泥土岩「コイパー地層」において、約2億3400万年〜2億3200万年前の地層に驚くべき発見をしました。
その時代の地層には、川で見つかる礫岩や湖に特有の堆積物、沼地の痕跡が密集していたのです。
さらに2000年代初めにはその発見に続いて、アメリカや中国、イタリアでも同じ時代に川や湖、沼地ができていた証拠が続々と発見されました。
これらの証拠は三畳紀の後期に長い長い雨が降り続いて、パンゲア大陸が湿潤な環境になっていたことを物語っていたのです。
このことから約2億3400万年〜2億3200万年前に起きた”雨の時代”が「カーニアン多雨事象(※)」と名付けられました。
(※ カーニアンとは、約2億5190万〜2億130万年前に相当する三畳紀をさらに細かく区分した時代のことで、約2億3400万年〜2億3200万年前にあたります)
つまり、地球にはかつて200万年もの間、雨が断続的に降り続けていた時代が確かにあったのです。
そしてカーニアン多雨事象は自然の生態系を大きく変えて、新たな支配者の誕生を促しました。