雨季による「新たな支配者」の誕生!
高温で乾燥した場所で生き続けるのは、生物にとって困難です。
とはいえ、止まない雨も生物には致命的だったようです。
この時代、カーニアン多雨事象によって大量絶滅が発生したことが明らかになっています。
その最大の被害を受けたのは意外にも海の生き物たちでした。
三畳紀後期に200万年もの雨季が続いたことで、陸地には巨大な川がいくつも形成されましたが、その川を通じて土壌にある大量の栄養素が海へと流入します。
これにより海洋環境の富栄養素化(栄養素が過剰に多くなること)が起こり、プランクトンが大量発生。
そしてプランクトンが激増したことで海中の酸素が大量に消費され、海水の溶存酸素量が激減し、海洋生物たちがどんどん死滅していったのです。
硬骨魚類からアンモナイト、タラトサウルスといった大型の海洋爬虫類までもが絶滅に追い込まれ、この200万年間で35%もの海洋生物が姿を消したとされています。
![画像](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2025/01/71e4c1f56c1654bedfffda4688be7bad-900x600.jpg)
その一方で、長い長い雨は陸上に新たな支配者を誕生させました。
それが「恐竜」です。
これ以前のパンゲア大陸では、爬虫類のリンコサウルスから単弓類のディキノドンといった小型の四肢動物たちが主な支配者として君臨していました。
恐竜も誕生こそしていましたが、その割合は生物全体の5%ほどで、少数派の種でした。
しかしカーニアン多雨事象により、パンゲア大陸の植物相が激変することになります。
高温乾燥の時代には背の低い草木がまばらに生えた植物相をしていたのですが、降水量が一気にドン!と増えたことで、針葉樹やソテツ類などの背の高い大きな樹木が鬱蒼(うっそう)と繁り始めたのです。
これらの樹木は葉っぱや幹が大きくて丈夫だったせいか、顎の弱いリンコサウルスやディキノドンは硬い植物をしっかり噛めず、消化もできなかったため、どんどん死んでいったのです。
また彼らは背の高い樹木の葉っぱに届かず、満足に食糧にありつくことができませんでした。
しかしその中で頑丈な歯や顎を持っていた恐竜たちはこの植物相にうまく適応することができました。
彼らは後ろ足で垂直に立ち上がることもできたので、背の高い樹木の葉っぱも難なく食べられたのです。
こうして陸上の支配者は一挙に恐竜へと代わり、その後、約6600万年前に巨大隕石が落ちるまで恐竜の時代が続くことになります。
では最後に、カーニアン多雨事象は何が原因で起こったのでしょうか?