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今世紀中、暑くて住めない場所が3倍に / Credit:Canva
geoscience

今世紀中に「暑すぎて住めない」場所が3倍に増える可能性がある

2025.02.25 20:00:00 Tuesday

夏の暑さが年々厳しくなっていると感じる人は多いかもしれません。

しかし、未来の地球では「暑い」を通り越して、「人間の命を脅かすレベルの暑さ」が広がるかもしれないという衝撃的な研究結果が発表されました。

イギリスのキングス・カレッジ・ロンドン(King’s College London)の研究チームは、今世紀末までに地球上で「暑すぎて住めない」範囲が3倍に拡大する可能性があることを明らかにしました。

この研究の詳細は、2025年2月4日付で『Nature Reviews Earth & Environment』誌に掲載されています。

Places on Earth Too Hot For Humans Will Triple This Century, Scientists Warn https://www.sciencealert.com/places-on-earth-too-hot-for-humans-will-triple-this-century-scientists-warn Half a degree rise in global warming will triple area of Earth too hot for humans https://www.kcl.ac.uk/news/half-a-degree-rise-in-global-warming-will-triple-area-of-earth-too-hot-for-humans
Mortality impacts of the most extreme heat events https://doi.org/10.1038/s43017-024-00635-w

人の命を脅かすほどの「暑さ」とは?

地球温暖化の影響で、異常気象が増加していることは広く知られています。

しかし、単なる「猛暑」ではなく、「人間にとって危険なレベルの暑さ」が問題になっていることをご存じでしょうか。

暑さが命を脅かすのは、体温を調整できなくなることが原因です。

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命を脅かすほどの暑さ / Credit:Canva

私たち人間は、汗をかくことで体内の熱を外に逃がし、体温を調整しています。

しかし、空気中の湿度が高すぎると汗が蒸発しにくくなり、熱が体内にこもってしまいます。すると、たとえ安静にしていても体温はどんどん上がり、生命の危機に陥ることがあります。

このような「体温調節が効かなくなる限界」を判断する指標として使われるのが、湿球温度(wet-bulb temperature)です。

湿球温度とは、温度計の先端を湿らせたガーゼで包み、風を当てることで水の蒸発冷却を再現し、気温と湿度を統合して表す温度です。

従来の研究では、湿球温度35℃が人間が耐えられる生理的な上限と考えられてきました。

これはたとえば、

  • 湿度が100%なら気温は35℃まで

  • 湿度が50%なら気温はおよそ46℃まで

といった組み合わせになります。これを超える環境では、どれだけ水を飲んでも、扇風機を浴びても、汗が蒸発せず、体温は上がり続けてしまいます

その結果、数時間以内に命に関わるリスクが生じるとされています。

しかし、2022年にペンシルベニア州立大学(Pennsylvania State University)が発表した研究では、実際にはこの限界はもっと低い可能性があると報告されました。

実験の結果、健康な若年成人であっても、湿球温度が30〜31℃を超えると体温の上昇が始まり、長時間の滞在は危険であることが示されました。

高齢者や持病のある人では、この限界はさらに低くなると考えられています。

人体が耐えられる「高温多湿の限界」はこれまでの想定より低いと判明

そして今回、イギリスのキングス・カレッジ・ロンドン(King’s College London)の研究チームは、そのような「危険な暑さ」の範囲が拡大すると報告しました。

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