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Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
geoscience

氷河の融解が世界各地の「火山の噴火リスク」を高めると判明

2025.07.09 12:00:40 Wednesday

「地球温暖化による氷河の融解が、静かに、しかし確実に火山噴火の引き金を引こうとしている」

そんな研究結果が米ウィスコンシン大学マディソン校(UWM)らにより明らかにされました。

研究チームはこのほど、南米チリ南部の火山を対象にした最新調査で、氷河が後退すると地下のマグマが爆発的に噴き出すリスクが高まることを発見。

しかもその現象はチリ南部のみならず、北米やロシア、さらには南極大陸にまで及ぶ可能性があるといいます。

なぜ氷河が溶けると、火山噴火が促されるのでしょうか?

研究の詳細は2025年7月8日にチェコ・プラハで開催された地球化学の国際会議「ゴールドシュミット会議」で発表されました。

 

Melting glaciers could trigger more explosive eruptions globally, finds research https://www.eurekalert.org/news-releases/1089948? Melting glaciers could trigger volcanic eruptions around the globe, study finds https://www.livescience.com/planet-earth/volcanos/melting-glaciers-could-trigger-volcanic-eruptions-around-the-globe-study-finds

氷河と火山、見えない力のせめぎ合い

「氷が溶けると火山が噴火する?」

一見、つながりのなさそうなこの2つの自然現象が実は密接に関わっていることは、1970年代のアイスランドの研究ですでに指摘されていました。

地球の地殻は、思ったよりも柔らかく、上に乗る氷河の重みによって大きく変形します。

重たい氷が地面を押しつけている間は、地下のマグマやガスは圧縮され、簡単には噴き出せません。

しかしその重たい氷が急速に融けてなくなると、地殻にかかっていた圧力が一気に解放され、地下のガスやマグマが膨張します。

その結果、地中深くにたまっていたマグマが爆発的に噴出するのです。

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モチョ・チョシュエンコ火山/ Credit: Pablo Moreno-Yaeger, UW-Madison

今回の研究では、チリ南部にある6つの火山――その中には現在は休止状態の「モチョ・チョシュエンコ火山」も含まれます――を対象に、過去の氷期と噴火の関係を調査しました。

究チームは、火山岩に含まれるアルゴンガスを年代測定に利用し、さらにマグマ中で形成された鉱物結晶を分析することで、過去の火山活動の履歴をたどりました。

すると、約2万6000年前から1万8000年前の最後の氷期の最盛期において、氷河が噴火を抑え込んでいたことが判明しました。

その間、地下にはシリカに富んだ大量のマグマが、地表下10〜15キロメートルの深さに静かに蓄積されていたのです。

そして氷期が終わり、パタゴニア氷床が急速に融解しはじめると、地下の圧力が解放され、一気に噴火が発生。

それがモチョ・チョシュエンコ火山の形成につながったと考えられています。

こうした「氷河の後退→マグマ膨張→爆発的噴火」という一連のメカニズムは、火山と氷河が重なる場所すべてで起こりうるといいます。

そしてその範囲は、決してアイスランドや南アメリカにとどまりません。

次ページ火山噴火が温暖化を加速する「負の連鎖」

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