国際宇宙ステーションから「ブルージェット」を分析する

ブルージェットは雷雲から成層圏に向けて放たれる、通常とは逆向きの非常に希少な雷です。
こうした超高層電放電は、高度20~100kmで起こる気象現象で、地球上からの観測は困難な上、発生自体も稀なため研究が難しい現象の1つです。
この研究では、ISS (国際宇宙ステーション)に搭載されたASIM (Atmosphere-Space Interactions Monitor)と呼ばれる装置を利用し、そんなブルージェットの初期過程を深く分析しました。
そして2019年2月26日、太平洋のナウル島付近にて、雷雲頂上から伸びるブルージェットを観測。
ブルージェットは上の映像にあるように、青い閃光のように、強烈な放電が上に向かって発生しています。
発生後は0.4秒続いており、高度50~55kmに到達したという。
通常の雷は地面に向かい、アース(接地)されることで電気が逃げます。では空に向かって放たれるブルージェットの場合、電気はどこへ流れ込んでいるのでしょうか?
この放電では、成層圏や中間圏、さらにその上層に存在する電離層へ電流が流れ込み、空気分子やイオンとの相互作用を通じて徐々に拡散・消失すると考えられています。
特にこの映像では、白いリング状の光が広がっているのがわかります。
これはエルヴス (Elves) と呼ばれる現象で、雷が発生した際に生じる強力な電磁パルス(EMP:Electromagnetic Pulse)が高層の電離層(高度約80〜100km)と相互作用することで発生します。
そこに存在する窒素分子がブルージェットの電磁パルスによって励起され、これが元の状態に戻る際に、リング状の光として発光するのです。
この発光は1ミリ秒未満で消滅するため、通常の観測では捉えにくい現象です。
こうした非常に珍しいブルージェットという現象ですが、どういうきっかけでこの稀な現象が起きるのかはよくわかっていません。
そこでこの研究が着目したのは、この映像の最初に確認できるいくつも雲の中に確認できる発光現象でした。