突如訪れた寒冷期「ヤンガードリアス・イベント」と彗星衝突説
約1万2800年前、地球は氷期から脱し、徐々に暖かくなりつつある過程にありました。
ところが、その流れは突然、そして急激に止まります。
北半球ではわずか1年以内に平均気温が約10℃も低下し、その寒冷な状態はおよそ1200年間続いたのです。
この現象は「ヤンガー・ドリアス期」と呼ばれ、現在でも原因をめぐる議論が続いています。

伝統的な説明では、北米にあった巨大な氷河湖(アガシズ湖など)の氷のダムが決壊し、淡水が北大西洋に大量流入したことで海流(熱塩循環)が停止し、寒冷化が始まったとされています。
しかし2007年以降、一部の研究者はまったく異なる視点からこの出来事に挑んできました。
それが「ヤンガー・ドリアス・インパクト仮説」です。
この説によると、地球は分解途中の彗星の破片と遭遇し、空中爆発や地表への衝突が連続的に発生。
その衝撃で氷床が不安定化し、大規模な洪水と気候変動が引き起こされたというのです。
この仮説は、世界各地の地層から「マイクロスフェルール(微小ガラス球)」や「白金・イリジウムの異常濃度」、さらには「ナノダイヤモンド」などの地球外物質が発見されたことで注目を集めました。
しかし、これらはすべて陸上の浅い地層からの発見であったため、「汚染の可能性がある」「信頼性に欠ける」として、多くの科学者から批判を受けてきました。
このように、彗星衝突説は長らく「眉唾もの」と見なされてきましたが、今回の発見がその流れを変えようとしています。