深海の堆積物から発見された“宇宙の証拠”
米カロライナ大学(USC)の研究チームは今回、グリーンランド沖・バフィン湾の深海にある4つの海洋堆積コア(深さ500〜2400m)から、ヤンガー・ドリアス期に該当する層を特定。
その層から、これまで陸上でしか見つかっていなかった隕石衝突の指標となる物的証拠が多数検出されたのです。
具体的には次のような証拠が確認されました。
・マイクロスフェルール:鉄やケイ素を含む直径4〜163μmの球体。地球の表層物質が高温で溶け、大気中を高速で移動しながら固まった痕跡であり、彗星爆発の衝撃波によって生成されたと考えられます。
・金属ダスト粒子(MDPs):酸素の少ない鉄・ニッケル・クロムを含む粒子。表面がねじれたり折れ曲がったりしており、高温で部分的に溶けた状態が確認されています。
・ナノ粒子(<1μm):プラチナ・イリジウム・コバルト・ニッケルといった地球外由来の元素が高濃度で含まれています。
・メルトグラス:融けた石英やアルミノケイ酸塩を含むガラス質の破片。高温衝撃がなければ生成されない物質です。

これらの異常はすべて、ヤンガー・ドリアス境界(YDB)と一致する層に集中しており、上下の層では急激に消失しています。
この明確な“層状の証拠”は、突発的な出来事によってもたらされたことを示唆しています。
さらに、こうした物質は海底6メートル以上の深さに埋もれ、かつ2400メートルもの海水の下にあったため、工業汚染の影響を受けている可能性は極めて低いとされています。
分析に用いられた技術も最先端です。
走査型電子顕微鏡(SEM)、レーザーアブレーションICP質量分析、さらにはナノ粒子を個別に分析できる「SP-ICP-TOF-MS」が活用され、精密な元素比の解析が行われました。
その結果、これらの粒子が少なくとも1%程度の彗星由来成分を含み、主に地球の表層物質が彗星衝突により溶融・放出されたものだと結論づけられています。
今回の発見は、ヤンガー・ドリアス・インパクト仮説にとって大きな転機となるかもしれません。
これまで「汚染の可能性がある」として退けられてきた地球外物質の証拠が、はるか北極の深海から見つかったことで、彗星衝突が実際に地球の気候に影響を与えた可能性が現実味を帯びてきたのです。
1万2800年前――彗星の断片が引き起こした寒冷化は、気候のみならず生態系や当時の人類社会にも大きな影響を与えた可能性があります。
文明の興隆と衰退の裏に、私たちがまだ知りきれていない“宇宙の介入”が存在していたのかもしれません。
今後の研究によって、より多くの海底から、あるいは氷床や湖底から、さらに確かな証拠が見つかることでしょう。
そのとき、私たちは地球の歴史の再解釈を迫られることになるかもしれません。
意外と宇宙から殴られている地球さん…。
地球が絶妙な位置にあるからこそ、こういうイベントにも大きく左右されてしまうんでしょうね。ハピタブルゾーンというと恒星からの距離が重視されますが、誕生した生命が存続し進化・発展していくにはそれを破壊し尽くさない穏やかな周辺環境も大事ということですね。
彗星「来たやでー」