銀河中心から離れた大質量ブラックホールが星を飲み込むイメージ画像/Credit: NSF/AUI/NSF NRAO/P.Vosteen
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星を引き裂く超大質量ブラックホールが銀河内を彷徨っている

2025.11.08 21:00:33 Saturday

星を丸ごと引き裂くほどの力を持つのは、太陽の何百万倍、何億倍もの質量をもつ超大質量ブラックホール(Supermassive Black Hole)だけです。

こうした巨大ブラックホールは、通常、銀河の“心臓部”としてその中心に存在しています。

ところが宇宙では、銀河どうしが衝突し、やがて融合する現象が、長い歴史の中でたびたび起きてきました。

その過程で、複数の中心ブラックホールが互いに近づき、最終的に1つにまとまることもあれば、重力の作用で小さなほうが中心から弾き出される場合もあったと考えられています。

このようにして銀河の中心から明確に離れた位置を動く超巨大な“放浪”ブラックホールの存在は理論的に予想されてきましたが、確実な観測例はきわめて限られていました。

しかし今回、銀河中心からはっきり離れた位置でブラックホールが星を引き裂く閃光が確認されたのです。これは星を破壊するような超大質量ブラックホール”が銀河内を彷徨っている有力な証拠になるかもしれません。

この現象を報告したのは、カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)のイタイ・スファラディ(Itai Sfaradi)氏らの国際研究チームです。

研究チームは、地球から約6.5億光年離れた別の銀河で、銀河中心から約2600光年(0.8キロパーセク)離れた場所に出現した謎の閃光を観測しました。

解析の結果、それが星がブラックホールに破壊された瞬間をとらえたTDEと呼ばれる現象だと結論づけられたのです。

研究の詳細は、2025年10月20日付の天文学専門誌『The Astrophysical Journal Letters』に掲載されています。

Astronomers Discover Fastest-Evolving Radio Signals Ever Observed from Black Hole Tearing Apart Star Astronomers Discover Fastest-Evolving Radio Signals Ever Observed from Black Hole Tearing Apart Star https://public.nrao.edu/news/astronomers-discover-fastest-evolving-radio-signals-ever-observed/
The First Radio-bright Off-nuclear Tidal Disruption Event AT 2024tvd Reveals the Fastest-evolving Double-peaked Radio Emission https://doi.org/10.3847/2041-8213/ae0a26

銀河中心から離れた場所で星が引き裂かれる

宇宙の多くの銀河の中心には、太陽の数百万〜数十億倍という質量を持つ超大質量ブラックホールが潜んでいます。

一方で、銀河の歴史を長い目で見ると、銀河どうしの衝突や融合は珍しくありません。

その際、中心ブラックホール同士が互いに引き合って合体することもあれば、重力に弾かれて小さい方が宇宙を彷徨い出す可能性もあります。

そのような通常は銀河中心にしかない大質量ブラックホールが銀河の中心から明確に離れた位置で活動しているものを、専門的にはオフ核(off-nuclear)と呼びます。

観測は、カリフォルニア州のパロマー天文台(Palomar Observatory)で行われている夜空を広く見渡してその変化を自動的に監視するサーベイプロジェクト(掃天観測)によって行われました。

この観測では、超新星やブラックホール現象などの一時的な光の変化を日々探していて、このプロジェクトは「ツィッキー・トランジェント・ファシリティ(Zwicky Transient Facility、略称ZTF)」と呼ばれています。

2024年8月25日、ZTFは地球から約6.5億光年離れた銀河で謎の閃光を検出しました。

この現象はAT 2024tvdと名付けられて解析が行われました。その結果、銀河の中心から約2600光年(0.8キロパーセク)離れた位置で発生した潮汐崩壊現象(TDE)であることが判明したのです。

AT 2024tvd領域の電波画像。HOSTが銀河中心。/Credit: Sfaradi et al., The Astrophysical Journal Letters (2025)

潮汐崩壊現象とは、星がブラックホールに引き裂かれる現象のことですが、これを引き起こせるのは、銀河中心部に存在するような非常に巨大な質量を持つブラックホールだけです。

しかし、今回確認された潮汐崩壊現象は、銀河の中心ではなく中心から明確に離れた位置で起きていました。

ここまで明瞭に中心外でこの現象が確認されたのは初めての例であり、これは銀河内を超大質量ブラックホールが彷徨っていることを示す有力な証拠となります。

次ページ銀河を彷徨う星喰いモンスターに襲われると何が起きるのか?

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