餌を食べすぎると「次の子」を作るタイミングが早まる

クサリヒメウズムシ属の扁形動物は、交尾をしなくても自分とほぼ同じ遺伝情報を持つ子孫を作ることができます。
その方法が「パラトミー(paratomy)」と呼ばれる無性生殖です。
通常、このワームは自分の体の中に新しい頭部と、それに続く体の区画を作り、それが十分に完成してから分離させます。
つまり、まず新しい個体を体の中で「組み立て」、完成してから切り離すわけです。
ところがチームが餌を豊富に与えると、この順番が崩れました。
研究者らはまず、クサリヒメウズムシ属6種に7種類の微小な餌を与え、どの餌で成長と繁殖が安定するかを調査。
その結果、4種では緑藻を共生させる繊毛虫を与えたときに安定した繁殖が確認されました。
そこでチームは、この餌の濃度を変えてワームの反応を比較することに。
すると餌が多いほど、ワームの体は長さ方向へ急速に成長し、鎖を構成する個虫の数も増えていったのです。
高濃度の餌では、およそ4日ほどで4〜5個の個虫が連なった長い鎖が現れました。
体をよく見ると、鎖の途中には発達段階の異なる複数の頭部が並んでいます。
最も古い頭部では脳や咽頭がかなり出来上がっている一方、後から作られ始めた頭部は、まだ細胞が集まり始めた段階でした。

なぜこんな奇妙な姿になるのでしょうか。
鍵は、「体が大きくなる速度」と「新しい頭が完成する速度」が同じようには加速しないことでした。
餌を増やすと、ワームでは細胞増殖が活発になり、胴体の長さ方向への成長が大きく加速します。
しかし、新しい頭部を完成させるには依然として約4日ほどかかります。
その結果、最初の子個体の頭がまだ完成していないのに、親の体はすでに次の繁殖を始められるほど大きくなってしまいます。
すると「1個体目を作り終える前に2個体目を作り始め、2個体目が完成する前に3個体目も始まる」という状態になり、複数のクローン個体が切り離されないまま一直線につながっていくのです。
つまり、餌によって新しい能力が生まれたのではなく、もともと存在する繁殖プログラムの進行速度にズレが生じた結果だったのです。


































