光を吸い込むはずなのに、なんで撮影できるの?
素朴な疑問として「ブラックホールは光さえ吸い込むと言われているのに、なぜその光を捉えて撮影することが可能なのだろう?」と考える人は多いでしょう。
これは一見矛盾しているように思えます。
この答えは、撮影されているのがブラックホール本体ではなく、その周辺を飛び回っていた光だからです。
つまりこの写真は土星の輪の部分を撮影しているようなもので、ブラックホール本体が光っているというわけではないのです。
そう説明されると、今度は「何でも吸い込むブラックホールの周りにどうして輪ができるの?」と思うかもしれません。
けれど、ブラックホールが「なんでも吸い込んでしまう」という認識は誤解であり、基本的にこの天体はほとんど物質を吸い込みません。
これは太陽系のほとんどの天体が太陽の周りを回るだけで、実際に太陽へ落下することはほとんどないという事実と原理は同じです。
例え太陽系の中心をブラックホールに置き換えたとしても、地球が軌道を変えて落下することはありません。
光が脱出できなくなるのは、ブラックホールの中心に近い事象の地平面と呼ばれる領域の内側においての話です。
写真の中心が暗いのはこれが理由で、この部分をブラックホールシャドウと呼びます。
ブラックホールの外の光は、ブラックホールに直接落ちることはなく強力な重力レンズ効果によって、一部が地球方向へ曲げられます。
これが地球から見たとき光の輪のようなものを形成するのです。
ブラックホールの写真が不鮮明でぼんやりして見えるのは、こうして多く光が拡散されて届くことが原因です。
これを補正してより鮮明なブラックホールの画像を作り出すという研究もあるため、いずれはもっとはっきりしたブラックホールの姿が見られる日も来るかもしれません。
では、今回の写真は具体的にどうやって撮影されたのでしょうか?