陸地に逃げ込むのではなく、「台風の目」に直進していた!
これまで、ハリケーンや台風の頻発する地域にいる鳥類は、致命的な暴風雨を切り抜けるために、様々な戦略を取っていると考えられてきました。
たとえば、太平洋とインド洋に広く分布する「オオグンカンドリ(学名:Fregata minor)」は、暴風を避けるために、大規模な迂回飛行をすることがわかっています。
それでは、台風によく見舞われる日本近海の海鳥ではどうでしょうか?
研究チームは、新潟県北部の日本海に浮かぶ粟島(あわしま)で営巣する「オオミズナギドリ(学名:Calonectris leucomelas)」を対象に、75羽の翼にGPSタグを取り付け、台風襲来時の行動を追跡しました。
この追跡調査は、すでに11年間にわたって続けられています。
11年間のデータ分析の結果、台風接近時に外洋にいたオオミズナギドリの大半は、台風から逃げるのではなく、台風の外縁を吹き回る「追い風」に乗ることを発見しました。
さらに、接近時にすでに、”台風の目”のコースと背後の陸地に挟まれていたオオミズナギドリは、外縁に留まるどころか、追い風に乗って危険度の高い”台風の目”の方向に直進していったのです。
こちらは、2018年8月に発生した台風・シマロン(Cimaron)が、日本海を通過したときのオオミズナギドリの飛行データです。
黒線が”台風の目”の移動コースを、赤や緑の線がオオミズナギドリの飛行コースを示しています。
先ほど説明したように、多くの個体は、台風の外縁部に留まっていましたが(なぜか、東北の方に飛んでいった個体もいますが)、うち3羽は”台風の目”に向かっているのがわかります。
チームによると、この3羽は、台風の中心部から60キロ圏内の風が最も強いエリアで、最長8時間にわたり追い風に乗って北上する台風についていったという。
研究主任のエミリー・シェパード(Emily Shepard)氏は「最初、自分たちが見ているGPSデータが信じられませんでした」と驚きを露わにしています。
中には、時速75キロという猛烈な風を受けているものもいました。
こうした行動は、他の海鳥では報告されていません。
なぜオオミズナギドリは、暴風吹き荒れる”台風の目”に向かっていったのでしょうか?