鼻に突っ込んだ指は「喉奥」まで達していた⁈
アイアイ(学名:Daubentonia madagascariensis)は、約40センチの体長に比して、きわめて長い指を持っており、最も長い中指は8〜10センチに達します。
その主な目的は、エサを採ることです。
アイアイは、中指を使って木の幹をコンコンッと叩き、残響音を発生させ、中に隠れている幼虫の居場所を探り当てます。
そして、樹皮に穴を開け、細長い中指を差し込み、幼虫をほじくり出して食べるのです。
しかし、長く発達した指の用途は、それだけではありませんでした。
今回、研究主任のアン=クレア・ファーブル(Anne-Claire Fabre)氏は、米ノースカロライナ州にあるデューク・キツネザル・センター(Duke Lemur Center)にて、「カリ(Kali)」という名のアイアイを観察していたところ、過去に前例のない指の使い方を目撃しました。
なんとカリは、細長い中指を自分の鼻に突っ込み、それを引き抜いた後、粘液をきれいに舐めとる行動を示したのです。
アイアイの鼻ほじり行動が記録されたのは、世界で初とのこと。
こちらが実際の映像です。
ファーブル氏は「単なる一回限りの行動ではなく、カリは何度も鼻をほじって、粘液を舐めとることを繰り返し、完全に没頭している様子でした」と話します。
そこで同氏と研究チームは、他の霊長類における「鼻ほじり」の先行研究を総合し、どれだけ普遍的な行動であるかを調査。
その結果、アイアイを新たに含め、ヒトやチンパンジー、オランウータンなど、少なくとも12種の霊長類で「鼻ほじり」行動が確認されていることがわかりました。
さらにチームは、アイアイの鼻ほじり行動をより詳しく理解するべく、アメリカ自然史博物館(AMNH)に保管されているアイアイの頭蓋骨と手の標本のCTスキャンを撮影。
そして、指が鼻腔内に差し込まれたときの位置を復元したところ、中指は鼻ほじりの際に、喉の奥まで達していることが示されたのです。
先の映像を見ても、「そんなに突っ込んで大丈夫?」と心配になるほど、長い爪を根元までずっぽりと突っ込んでいるのがわかります。
一体アイアイは、何のために長い指で鼻をほじっているのでしょうか?
霊長類が「鼻ほじり」をして食べる理由については、いくつかの説が挙げられています。
たとえば、「指で取り出した鼻粘液を摂取することで免疫系が強化される」とか、鼻くそを食べている人に虫歯があまり見られないことから、「歯の表面に細菌が付着するのを防ぎ、口腔内の健康を向上させる可能性もある」と言われています。
しかし研究チームは、霊長類が積極的に鼻ほじりをする理由について、「単に取り出した鼻くそや粘液の食感や味、塩味を好んでいるからではないか」と考えています。
特にアイアイにとっては、木の幹も鼻の穴も、美味しいものをほじくり出すための格好の餌場なのかもしれません。
本研究の成果を受け、同チームのロベルト・ポルテラ・ミゲス(Roberto Portela Miguez)氏は、このように述べています。
「アイアイは現在、絶滅の危機に瀕しており、種の存続には私たちの助けが必要です。
今回のような研究報告により、アイアイへの注目や関心を集め、より多くの人々がアイアイの保護を支持するようになれば幸いです」