感染源は敵対している「ピューマ」にあった⁈
データ分析の結果、オオカミの感染率は、公園内に生息するピューマと接触する機会の多い個体で最も高いことが判明しました。
ピューマはネコ科の動物であり、終宿主としてトキソプラズマを保有していることが分かっています。
そして、ピューマと生息エリアが重なっているオオカミの群れほど、トキソプラズマへの感染率が高かったのです。
こちらはオオカミの3つの群れとその感染率(赤)を図示したもので、ピューマの縄張り(網線)と重なっているオオカミで感染率が最も高くなっています。
チームによると、オオカミとピューマは北米で同時に進化した肉食種であり、基本的に同じ獲物を捕食対象としているため、縄張りが重ならないようお互いを積極的に回避しているという。
ところが、オオカミがトキソプラズマに感染し、行動が大胆になることで、ピューマの縄張りに入ることを恐れなくなった個体が増えると指摘します。
そうなると、ピューマの縄張りに入る→トキソプラズマに感染する→新たな群れで感染が拡大という悪循環を延々と繰り返す可能性があるのです。
研究者は、トキソプラズマに感染しても健康なオオカミに悪影響はないが、子どもや免疫不全の個体が感染すると致命的になるリスクが高まると説明。
さらに、ピューマとの縄張り争いで死傷者が増えることも考えられます。
加えて、リーダー格のオスが増えてしまうと、必ずやトップの座をかけた血みどろの抗争が勃発するでしょう。
オオカミの主な死因としては、人為的なもの(密猟や車との衝突事故)に加え、種内闘争と大型動物との争いの際に負った傷が知られています。
現時点で、イエローストーン国立公園のオオカミの数が目に見えて減っているという報告はありませんが、今後、トキソプラズマの感染拡大がオオカミを種の存続の危機に追いやるかもしれません。