タンポポの綿毛に着想を得た「人工妖精」
タンポポの綿毛に着想を得た「人工妖精」 / Credit:Hao Zeng(Tampere University)_A fairy-like robot flies by the power of wind and light(2023)
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タンポポの綿毛みたいに飛ぶ妖精ロボット

2023.02.06 Monday

タンポポの綿毛は、風を受けて遠い地域まで種を運ぶのに役立ちます。

フィンランド・タンペレ大学(Tampere University)工学自然科学部に所属するハオ・ゼン氏ら研究チームは、タンポポの綿毛から着想を得た「人工妖精」を開発しました。

わずか1.2mgの飛行ロボットは、光を受けて羽を開閉し、風と共に遠くへ飛んでいくことができます。

将来的には、植物の受粉を助ける「送粉者」の役割を果たせるかもしれません。

研究の詳細は、2022年12月27日付の科学誌『Advanced Science』に掲載されました。

A fairy-like robot flies by the power of wind and light https://www.tuni.fi/en/news/fairy-robot-flies-power-wind-and-light?navref=curated--grid Incredible ‘Fairy’ Robot Sails on The Breeze Like a Floating Dandelion https://www.sciencealert.com/incredible-fairy-robot-sails-on-the-breeze-like-a-floating-dandelion
Dandelion-Inspired, Wind-Dispersed Polymer-Assembly Controlled by Light https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202206752

光に反応して羽ばたく「人工妖精」

植物の花粉を運んで受粉を手助けする動物や昆虫を「送粉者」「花粉媒介者」と呼びます。

近年では、ミツバチなどの送粉者が減少傾向にあり、今後、食料生産や生物多様性に大きな影響を与える恐れがあります。

人類は新たな送粉者を探さなければいけないのです。

ミツバチのような花粉媒介者が必要とされる。タンポポの綿毛のようなロボットがその役割を果たせるかもしれない。
ミツバチのような花粉媒介者が必要とされる。タンポポの綿毛のようなロボットがその役割を果たせるかもしれない。 / Credit:Canva

ゼン氏ら研究チームは、その役割をロボットが果たせないかと考えました。

そして彼らは、風の力で遠くまで漂う「タンポポの綿毛」から着想を得て、指先サイズの「妖精みたいな飛行ロボット」を開発したのです。

彼らはこのロボットを「人工妖精」と呼んでいます。

開発された「人工妖精」
開発された「人工妖精」 / Credit:Hao Zeng(Tampere University)_A fairy-like robot flies by the power of wind and light(2023)

人工妖精の可動部には、応答性の液晶エラストマー」が利用されています。

液晶エラストマーは棒状の分子が規則正しく並んだ素材であり、外部の刺激(温度、光、電場、磁場など)によって配列が変化するという特性があります。

またゴム弾性も持っています。

これらの特性により、液晶エラストマーは以前から人工筋肉としての役割が期待されており、今回、人工妖精の部品として光に反応するタイプが使用されました。

人工妖精に光を当てると、その美しい羽(14μmの繊維の集まり)が開閉するのです。

光を当てると羽が開閉する
光を当てると羽が開閉する / Credit:Science X: Phys.org, Medical Xpress, Tech Xplore(YouTube)_A fairy-like robot flies by the power of wind and light(2023

とはいえ、これで羽ばたいて空を飛ぶわけではありません。

人工妖精はタンポポのように風の力を受けて受動的に空中を漂います。

光で開閉する羽は、この際風の受け方をある程度コントロールする目的で利用されます

例えば、レーザー光線やLEDを使って意図的に人工妖精の離着陸を制御できます。

また野外の日光に対応して、自動的に羽を広げて飛んでいくことも可能でしょう。

風のある場所では、光が当たると自然と飛び立つ
風のある場所では、光が当たると自然と飛び立つ / Credit:eeDesignIt(YouTube)_A fairy-like robot flies by the power of wind and light(2023)

しかし液晶エラストマーで開閉する羽があるだけでは、このロボットは本物の綿毛のように遠くまで飛んでいけません。

次項では、タンポポの綿毛を模倣した他の機能を紹介します。

次ページタンポポを模倣した「人工妖精」は上方に空気の渦を作り出して揚力を生み出す

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