光に反応して羽ばたく「人工妖精」
植物の花粉を運んで受粉を手助けする動物や昆虫を「送粉者」「花粉媒介者」と呼びます。
近年では、ミツバチなどの送粉者が減少傾向にあり、今後、食料生産や生物多様性に大きな影響を与える恐れがあります。
人類は新たな送粉者を探さなければいけないのです。
ゼン氏ら研究チームは、その役割をロボットが果たせないかと考えました。
そして彼らは、風の力で遠くまで漂う「タンポポの綿毛」から着想を得て、指先サイズの「妖精みたいな飛行ロボット」を開発したのです。
彼らはこのロボットを「人工妖精」と呼んでいます。
人工妖精の可動部には、「光応答性の液晶エラストマー」が利用されています。
液晶エラストマーは棒状の分子が規則正しく並んだ素材であり、外部の刺激(温度、光、電場、磁場など)によって配列が変化するという特性があります。
またゴム弾性も持っています。
これらの特性により、液晶エラストマーは以前から人工筋肉としての役割が期待されており、今回、人工妖精の部品として光に反応するタイプが使用されました。
人工妖精に光を当てると、その美しい羽(14μmの繊維の集まり)が開閉するのです。
とはいえ、これで羽ばたいて空を飛ぶわけではありません。
人工妖精はタンポポのように風の力を受けて受動的に空中を漂います。
光で開閉する羽は、この際風の受け方をある程度コントロールする目的で利用されます。
例えば、レーザー光線やLEDを使って意図的に人工妖精の離着陸を制御できます。
また野外の日光に対応して、自動的に羽を広げて飛んでいくことも可能でしょう。
しかし液晶エラストマーで開閉する羽があるだけでは、このロボットは本物の綿毛のように遠くまで飛んでいけません。
次項では、タンポポの綿毛を模倣した他の機能を紹介します。