ルーシーの筋肉構造をありし日の姿に復元!
チームはまず、筋肉の復元に先立って、私たち現生人類の体からスタートしました。
現代の大人の男女の筋肉と骨格をMRIとCTスキャンで撮影し、それぞれの筋肉がどのような経路を通るかをマッピングして、デジタル上で筋骨格系のモデルを構築。
次に、ルーシーの化石標本のオープンソースデータを利用して、骨格の関節を生きていたときの状態に戻しました。
この作業により、ルーシーの各関節がどの方向にどれだけ可動・回転できるかを推定できます。
最後に、先ほどの現代人の筋肉マップと、化石に残るわずかな筋肉のつながりの痕跡をもとに、ルーシーの骨格上に筋肉組織を3Dデジタルで復元しました。
その結果、ルーシーの両脚にそれぞれ36個の筋肉組織が復元されましたが、驚くことに、その筋肉のほとんどが現代人よりも遥かに大きかったのです。
例えば、ルーシーの太ももとふくらはぎの主要な筋肉は、比率に換算すると、現代人の2倍以上の大きさがありました。
また現代人では太ももの総重量の50%が筋肉であるのに対し、ルーシーの太ももでは74%を占めていたのです。
そして最も重要な発見は、ルーシーの膝の筋肉が現代人と同じように「膝関節をまっすぐに伸ばす構造を持っていた」ことでした。
これは彼女がチンパンジーのようなガニ股ではなく、まっすぐに直立できたことを裏付けるものです。
研究主任のアシュレイ・ワイズマン(Ashleigh Wiseman)氏は「この結果は、ルーシーが完全な直立二足歩行ができたとする主張にさらなる説得力を持たせるもの」と話しています。
しかしながら、ルーシーの歩き方が完全に私たちと同じだったわけではないようです。
というのも、彼女の属するアウストラロピテクス・アファレンシスは、東アフリカの開けた草原と、より密な森林のある地域の両方で暮らしていたことが指摘されています。
つまり、ルーシーは地上だけでなく、サルやチンパンジーのように樹上生活にも適応していたはずなのです。
となると、鬱蒼とした樹冠の中でも俊敏に動けるような体をしていたでしょう。
私たちのように縦にスラッと伸びた姿勢では、とても木々の中では生活できませんね。
それを踏まえて、ワイズマン氏は「ルーシーは現在生きているどの霊長類にも見られない方法で歩き、動いた可能性が高い」と述べました。
もしかしたらルーシーは地上にも樹上にも適応した「ターザン」のような身のこなしをしていたのかもしれません。