調査された全ての「大人のおもちゃ」にホルモンかく乱物質が含まれていると判明!
「大人のおもちゃ」と私たちが呼ぶ性具は、少なくとも石器時代には存在していたと考えられています。
ドイツの洞窟からは今から4800年以上前に作られたとされるペニスを模した石器が発見されています。
古代のペニスは性的快楽だけでなく処女喪失など儀式にも用いられていましたが、人間の生殖器にアプローチする性具であるのは間違いありません。
人類の科学技術が進歩するにつれ「大人のおもちゃ」の素材も進歩し、石器や木製だった素材は、ゴムやプラスチックなどの樹脂へと変わり、現在では医療用シリコンも使われるようになっています。
また工作技術の進歩により駆動部品が内蔵されて「振動」機能が加わり、電子部品の導入で高度な制御も可能になってきました。
しかし技術進歩の歩みとは裏腹に「大人のおもちゃ」は常にアンダーグラウンドの領域に隠されていました。
その象徴的な存在が、大人のおもちゃの販売ケースにしばしばみられる「ジョークグッズです」という表記です。
この表記は購入者の心理的負担を減らす役割も果たすものの反面、実際の使用に伴うリスクを回避する口実にもなっています。
そのため子供用玩具に対してはいち早く導入された材料や塗装剤にかんする化学物質の規制や表示義務も存在せず、安全性については企業の良心にゆだねられています。
一方「大人のおもちゃ」の普及は拡大しつづけており、現在米国では異性愛者の男性の50%、異性愛者の女性の50%がバイブレーターを使用しています。
またLGBTQの人々ではこの割合はさらに高く、レズビアン女性の70.6%、バイセクシャル女性の79.7%%、バイセクシャル男性およびゲイ男性では78.5%が使用していることが報告されています。
そこで今回、デューク大学の研究者たちは複数の大人のおもちゃに使用されている化学物質の分析を行うことにしました。
対称となったのは①デュアルバイブ ②アナルビーズ ③アナルバイブ ④マッサージ型バイブレーター の4種類であり、どれも米国で市販されています。
調査に当たっては上記の4種類の大人のおもちゃが3個ずつ購入され、成分分析が行われました。
結果、4種類の全てからフタル酸エステル類が検出されました。
特に①のデュアルバイブと②のアナルビーズでは米国の規制当局によって子供用玩具に許可されているより多くのフタル酸エステル類が検出されました。
フタル酸エステル類はホルモンかく乱物質の一種として知られており、人間の健康に悪影響を与える可能性が指摘されています。
高濃度のフタル酸エステルを動物に注射した実験では、動物たちの肝臓・腎臓・肺・生殖器の細胞組織が損傷を受け、機能が低下することが報告されています。
そのため幼い子供が口に入れる可能性のある玩具などには、フタル酸エステル類の利用が規制されています。
今回の研究で検出されたフタル酸エステル類は動物実験で用いられた量に比べると遥かに低濃度であり、実際どこまで人体に危険性があるかは不明です。
しかし大人のおもちゃは体内に吸収されやすい粘膜との接触が前提であるため、有害である可能性が指摘される物質について、法的に野放しに近い状況であることは問題でしょう。
たとえば今回の研究で使われた商品の中には「フタル酸エステル不使用」と宣伝されていたものがありましたが、実際には微量の混入が起きていました。
また別のおもちゃはパッケージの表側に「ギャグギフトです」として身体への使用の安全を保障しない言葉が記されていましたが、裏面では「身体に安全」と表記されていました。
こうした問題は口腔粘膜を意識した子供用玩具で起きた場合には大事件になりますが、生殖器の粘膜を意識した「大人のおもちゃ」ではニュースになることはありません。
現状、大人のおもちゃには法的に定められた安全基準が存在せず、使用材料にかんしては制限がありません。
そのため研究者たちは、多くの人々が使う大人のおもちゃに対しても、子供用玩具のような安全基準の制定が必要であると結論しています。
「大人のおもちゃ」はアンダーグラウンドな商品と考えられ、ジョークグッズという口上で安全面が真面目に考慮されて来なかったのは事実です。
しかし利用率を調査したデータを見る限り、もはや多くの人々の健康に影響する可能性がある商品です。
大人のおもちゃは、そろそろ安全基準を制定した正規の衛生用品にランクアップさせる必要があるでしょう。