大量絶滅を生き延びたヤツメウナギ
恐竜が誕生したのが約2億3000万年前、樹木が誕生したのが約3億8000万年前と言われているので、オルドビス紀(4億8500万年前~4億4400万年前)に誕生したとされるヤツメウナギは、恐竜や樹木よりも古くから存在していたことになります。
つまり、ヤツメウナギはビッグファイブとも呼ばれる5度の大量絶滅のうち、少なくとも下記4度の大量絶滅を生き延びてきたことになります。
デボン紀後期(F-F境界)
海生生物の多くが絶滅し、全生物種の約82%が絶滅したとされています。
この時期の環境変化としては、寒冷化と海洋無酸素事変の発生が挙げられます。また、寒冷化、有機物の堆積、大気中の二酸化炭素の減少も示されており、これらは海水準(平均的な海水面の高さ)の上昇および大量絶滅と同時に発生していました。
さらに、地層からは小天体衝突の証拠とされる粒子も見つかっていますが、大量絶滅との直接的な関連はまだ明確ではありません。
ペルム紀末(P-T境界)
古生代の末期、特にペルム紀の終わり頃にあたる約2億5100万年前、地球史上最も壮絶な大量絶滅が発生しました。
この大量絶滅によって、海に生息していた生物のなんと最大96%もが絶滅し、全ての生物種を合わせても90%から95%がこの地球上から消えてしまいました。
この大量絶滅の原因ははっきりわかっていませんが、全世界で海岸線が後退したことによって食物連鎖のバランスが壊れたことや、「スーパープルーム」という巨大なマントルの上昇流による大規模な火山活動などが一因と考えられています。
三畳紀末(T-J境界)
約1億9960万年前の大量絶滅では、アンモナイトの多くや大型の爬虫類や単弓類(脊椎動物のうち陸上に上がった四肢動物のグループの一つ)が絶滅しました。
生物種の76%が絶滅したとされており、この大量絶滅の原因は、パンゲア大陸の分裂とそれに伴う大西洋の形成に関連する火山活動が有力視されていますが、隕石の衝突と見る説もあります。
なお、この時期には小型だった恐竜が急速に発展していきます。
白亜紀末(K-Pg境界)
約6600万年前、この時期に現在の鳥類へと進化するいくつかの種を除き、ほとんどの恐竜は絶滅しました。
この大絶滅では、翼竜、首長竜、モササウルス類、アンモナイトなども完全に絶滅しました。全生物種の約70%がこの時期に絶滅したとされています。
恐竜の絶滅の原因には様々な説がありますが、最も有力視されているのは小惑星衝突説です。この説によれば、直径約10〜15キロメートルの小惑星が地球に衝突し、それが恐竜の絶滅を引き起こしたとされています。
この大量絶滅の数々をヤツメウナギたち無顎類はどう生き延びてきたのでしょうか。
オルドビス紀(4億8500万年前~4億4400万年前)に入り、ヤツメウナギの祖先である無顎類は多様化し、体が頑丈な骨のような皮骨で覆われるなど発達していきましたが、デボン紀後期の大絶滅で、多くの無顎類の種が絶滅してしまいました。
しかし、生き残った無顎類の中で、どの系統がヤツメウナギの祖先であったのかは、まだ完全には明らかにされていません。
また、長らくその正体が不明だったコノドント動物という種も、今では無顎類であると言われています。
コノドント動物は小さく、プランクトンのような生活を送っていて、世界中の海に生息していました。そして、古生代の終わりまで生き残ったと言われています。ヤツメウナギの祖先もこのように小さな体でひっそりと海に生息していたのかもしれません。
意外にも食べられるお店は多い
日本では、カワヤツメ、スナヤツメ、シベリアヤツメ、そしてミツバヤツメの4種のヤツメウナギが、北海道の石狩川や青森県、秋田県、山形県、新潟県などで確認されています。
このうち、カワヤツメと一部のスナヤツメは食用になり、意外にも食べることができるお店は多く存在しています。
ただし、年中食べられるわけではないようで、旬とされるのは水が冷たい11~2月の寒い時期となっています。
幾度の絶滅危機を耐え抜き、恐竜や樹木よりも古い歴史と少しグロテスクな姿をあわせ持つヤツメウナギ、一度くらいは思いを馳せながら食べてみるのもいいかもしれません。