Point
■クモの中には「バルー二ング」という、糸で作った風船で空を飛ぶ習性が知られている
■このバルー二ング行動が、大気層が作る電場(APG)によって促されるという説がある
■人工的な電場を作ると、クモはバルーミングを始め、同時に電場がバルー二ングの上昇力を生み出すことを発見
雨が降った時や緊急時、クモは小さなシルク製の風船を背負って飛び立ちます。いわゆる「バルー二ング行動」と呼ばれるものです。
このバルーニングは、風がほとんどない天候でも飛べることが確認されており、何を動力としているのかは研究者の間でもわかっていませんでした。
しかし最近、この行動を促しているのが「電場」であることがわかりました。この電場が、風の無いときの上昇力となっているようです。
研究はブリストール大学の研究者エリック・モーレイ氏らによって行われました。
https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0960982218306936
空飛ぶ生物と言われて、クモを思いつく人はいないでしょう。
しかしクモは高度4kmの上空を飛び、何百kmもの距離を散らばっていくことができます。
クモたちが飛ぶときに経由するのは、太陽放射によってイオン化した大気である電離層と、地上の間の電気回路である大気電位勾配(APG)です。
研究者たちの説明によると、この電気回路がバルー二ング行動を引き起こしているというアイディアは、1800年台に最初に提唱されていましたが、その後ずっとテストされずに無視されてきたとのこと。
2013年に、他のグループが「電場はバルー二ング戦略の少なくとも一部であるかもしれない」という理論を提唱しました。そこでモーレイ氏らは、本当にクモが電場やその変動に反応するのかを証明することに興味を持ったといいます。
今回の研究でモーレイ氏は、バルーントラップを使うヒザグモ属のクモを捕らえ、風や大気電気といった刺激を持ち込まない実験装置を準備しました。それから人工的に電場を作って、何が起きるかを観察したのです。
すると、まさにクモたちが電場が展開された時にバルーニングすることが判明。さらに、電場の静電力がその動きを駆動するのに十分な力があることも発見しました。静電力は、下敷きで髪をこすった時に髪を立ち上げるのと同じ力です。
クモは電場をオフにすると滑空して降下し、オンにすると上昇しました。
しかし研究者は、「クモがバルーニングを行うにあたって、電場によって飛べることは確かですが、他の要因でも飛べる可能性は残っています」と話しており、十分条件ではありますが必要条件ではない可能性があると説明しています。
クモはトリコボスリアと呼ばれる感覚毛を持っており、APGに反応して動く可能性があり、この器官を使ってAPGを検出すると研究者たちは考えています。
「益虫」として身近な存在のクモですが、実は電気も操れるすごいヤツだったようです。これからクモを見る目が変わりそうですね。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/10746