ノコギリ刃を収める「鞘」を詳しく調査!
スモールトゥース・ソーフィッシュ(学名:Pristis pectinata)は主に、アメリカの南フロリダ沖とバハマ西部の海域で見られるノコギリエイです。
成体はノコギリ刃を含めて最大全長5.5メートルに達し、普段は沖合の方に住んでいます。
しかしメスは妊娠すると、4月〜5月にかけて河口の付近に入り、そこで一度に最大20匹の子供を出産します。
子供たちはしばらくの間、河口の辺りで成長期を過ごすので、すぐさま海の方には戻りません。
性的な成熟に達するまではオスで4〜5年かかり、メスではもう少し時間がかかるといわれています。
本種はすでに絶滅危惧種に指定されている希少種であり、チームは過去18年の歳月をかけて毎月調査に出かけ、スモールトゥース・ソーフィッシュの稚魚の鞘サンプルを一握り集めてきました。
そして今回、その集めた鞘サンプルを電子顕微鏡やマイクロCTを用いて詳しく分析。
その結果、スモールトゥース・ソーフィッシュの鞘は薄い表皮層とその下にある厚い真皮層の2つの組織から成っていることがわかりました。
また、ケラチンやコラーゲンに似たタンパク質が鞘の中に豊富に含まれていました。
質感はロウソクの原料としても使われるパラフィンワックスのような感触で、「しっかり丈夫でありながら、わずかに弾力もあった」と研究主任のグレッグ・プラキス(Gregg Poulakis)氏は表現しています。
それから鞘は生後4日以内に剥がれ始め、段階を追って徐々に細かい刃が露出していくことを明らかにしました。
鞘は2週間後には完全に消失するとのことです。
ちなみにですが、ノコギリ状の歯は左右に24〜32本ずつ生えており、欠けた歯は土台が無傷である限り、何度でも再生します。
ただし、根本から折れてしまった歯は2度と再生することはありません。
以上のように、ノコギリエイの鞘を事細かく分析したのは今回が初めてであり、「鞘は壊れやすいゼラチン質の膜であるという長年の仮説を否定するものとなった」とプラキス氏は話しています。
その一方で、現在の海はスモールトゥース・ソーフィッシュにとって楽観視できる状態にはありません。
近年は生息地の破壊や漁網への偶発的な巻き込みにより、スモールトゥース・ソーフィッシュの個体数がどんどん減っているからです。
チームは種全体の保護活動も含めて、今後もスモールトゥース・ソーフィッシュの生態調査を続けていきたいと話しています。