世界初の木造人工衛星
世界初の木造人工衛星 / Credit:京都大学_世界初の木造人工衛星(LignoSat)完成、JAXAへ引き渡し宇宙での運用へ 木の可能性を追及し木材利用の拡大を目指す(2024 住友林業)
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世界初の木造人工衛星が9月に打ち上げ予定!宇宙で木材を使う意味とは!? (2/2)

2024.06.08 Saturday

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宇宙開発に木材は使えるのか

2020年4月に開発が開始されてから、研究チームは、ホオノキ、ヤマザクラ、ダケカンバを用いて、宇宙暴露実験を行ってきました。

曝露試験中の様子(拡大図:中央の直方体上部が曝露試験中の木材)
曝露試験中の様子(拡大図:中央の直方体上部が曝露試験中の木材) / Credit:JAXA/NASA_世界初、10か月間の木材宇宙曝露実験を完了~木材用途の拡大、木造人工衛星(LignoSat)の打上げを目指して~(2023 京都大学)

様々な物性試験の結果により、宇宙でも安定して使用できる樹種として、ホオノキが選定されました。

均質な木材は割れにくいという特性があります。

この点、ホオノキは非常に均質な木材として知られています。

しかも加工がしやすいため、人工衛星の材料として適切だったようです。

また宇宙空間における極端な温度変化や宇宙放射線、強い紫外線などの影響に関しても、10カ月に及ぶ実験によりホオノキ材が大きな影響を受けないと分かりました。

ちなみに、木造人工衛星の実機には、住友林業で伐採したホオノキを使用しているようです。

しかし、研究チームが苦労したのは、材料の選定だけではありません。

人工衛星を組み立てる際に釘やネジを使用すると、宇宙の過酷な温度変化により木材がひび割れてしまうのです。

そこで彼らが着目したのは、釘や接着剤を一切使わずに、木と木を組み合わせて作る家具・建具の技法「指物(さしもの)です。

研究チームは指物の職人の協力を得て、日本古来の伝統的技法を採用。

これにより、宇宙の変化に対応できる頑丈な人工衛星を作り上げることに成功しました。

約4年かけて完成した木造人工衛星は、10cm3の小型の木箱です。

もちろん、全てが木材で作られたわけではなく、人工衛星の表面にはソーラーパネルが取りけられており、これで必要な電力を生成できます。

また内部には電子機器が収まっており、位置情報や木の状態を送信することができます。

そしてNASAとJAXAによる数々の厳しい安全審査も通過しており、この度、世界で初めて、宇宙での木材活用が公式に認められました。

この木造人工衛星「LignoSat」は、6月4日にJAXAへ引き渡されました。

そして宇宙空間での運用に向け、2024年9月には、アメリカ・フロリダ州のケネディ宇宙センターから、スペースX社のロケットに乗って国際宇宙ステーション(ISS)へ移送される予定です。

ISS到着から1カ月後には、「きぼう」日本実験棟より宇宙空間に放出されるようです。

年末には木造人工衛星が宇宙空間を漂っており、宇宙での木材使用に関するデータを送ってくれるはずです。

今回のプロジェクトについて聞いた多くの人は、「なぜ木材にしたのか」と考えたことでしょう。

しかし、もしかしたら将来、この斬新なアイデアが宇宙での木材利用の道を開き、林業界、木材業界の発展に貢献するかもしれないのです。

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世界初の木造人工衛星が9月に打ち上げ予定!宇宙で木材を使う意味とは!? (2/2)のコメント

あまな

太字で「10cm³」とあるけれど、一辺10cmの間違いでしょうか。このサイズ感で小さじ2って事はないよね…?

finch

satはstella(星)ではなくてsatellite(衛星)では?

Kouetsu

はじめまして、
現代、石油から多くのものが作られていますが石油ももともとは木が変化したものとおもいます。木材を使ってプラスチックを作ることも考えられております。地球上には植物と動物繁栄していますが命あるものは全てつながっていると思います。無生物と生物、生物の中にも循環の原則があると思いますが、生物を利用することで今までとは全く異なる世界が開けてくるのではと期待しております。

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