私たちの「複雑な動き」は重力に支えられている?
私たちは普段、左右の手を組み合わせてさまざまな動きをしています。
しかし、どんな組み合わせでも同じように動かしやすいわけではありません。
たとえば左右の手に同時に力を入れたり抜いたりする動きは、比較的簡単に維持できます。
一方で、左右を交互に動かしたり、片方の動きをもう片方から少しだけずらしたりすると、難易度は高くなります。
運動研究では以前から、両手を同時に動かす「0度」のパターンが最も安定し、左右を交互に動かす「180度」がそれに続き、片方を4分の1周期ずらす「90度」は特に不安定であることが知られていました。
つまり人間の運動には、自然に維持しやすい動きと、崩れやすい動きがあるのです。
では、その安定性は何によって決まっているのでしょうか。
これまで運動の速度や視覚情報などが影響することは研究されてきましたが、研究チームが今回注目したのが「重力」でした。
私たちは生まれてからほぼずっと1Gの環境で生活しています。
そのため普段は意識しませんが、重力は姿勢や平衡感覚、筋肉の状態などに継続的な影響を与えています。
そこで研究チームは、重力そのものが複雑な協調運動を安定させる土台になっているのではないかと考えました。
実験には右利きの成人12人が参加。
参加者は放物線飛行によって0G、0.25G、0.5G、0.75Gの環境を経験し、地球上と同じ1Gでの成績とも比較されました。
その間、座席に座ったまま左右の腕で力センサーを押し、0度、90度、180度という3種類のタイミングで周期的に力を出しました。
つまり、左右の腕が力を出すタイミングをどこまで正確に合わせたり、ずらしたりできるかを調べたのです。
さらに参加者には、目標となる動きを示す視覚ガイドも与えられました。
その結果、1Gでは従来どおり0度が最も安定し、180度がそれに続き、90度が最も不安定でした。
そして重力が弱まると、とくにもともと不安定な90度の協調パターンを保つのが難しくなり、より安定した動きへ引き寄せられることが分かったのです。
では、実際に参加者の動きはどのように変わっていったのでしょうか。
より詳しい結果を次項で見ていきます。
































