現代の若者は「独身」に満足しているのか?
今回の研究を始めるきっかけは、結婚率の低下、離婚率の上昇、単身世帯の増加といった現代社会の顕著な変化にありました。
これは世界的に見られる傾向であり、現代の若者たちが以前の世代よりも「独り身でいることへの満足度が高くなっている」可能性を提起しています。
研究主任のティタ・ゴンザレス・アビレス(Tita Gonzalez Avilés)氏はこう話します。
「両親や祖父母の世代に比べて、現代人は結婚の頻度が低く、離婚率が高くなっています。それに伴って、未婚や同棲、長期独身といった多様な関係が受け入れられるようになりました。
独身は今や社会的にごく普通のように見えますが、その一方で、実際に独身者が今の生活状況に満足しているかどうかは明らかになっていません」
そこでアビレス氏らは今回、独身でいることの満足度が年代ごとにどう変化しているかを調査しました。
ドイツ在住の2900名以上を対象に調査
本調査ではドイツ在住の一般男女2936名(14〜40歳)を対象としました。
参加者は生まれた年代ごとに「1971〜1973年」「1981〜1983年」「1991〜1993年」「2001〜2003年」に分類できます。
調査は2008〜2011年と2018〜2021年の2回に分けて行われました。
調査期間と対象者の年齢をわかりやすくまとめた図の例がこちらです。
ベージュが10代の青年期、グリーンが20代の成人形成期、ブルーが30代の成人確立期になります。
参加者は、調査当時の「交際状況」「独身生活」および「生活全般」に対する満足度を回答しました。
独身生活の満足度は例えば、「独身である状況にどれくらい満足していますか?」という質問に対し、0(非常に不満)〜10(非常に満足)の11段階で評価してもらっています。
交際状況や生活全般への満足度も同様の仕方で測定しました。
チームはこれに加えて、参加者の年齢、性別、性格特性(特に外向性と神経症的傾向※)などの個人的要因も考慮して、それぞれの満足度に与える影響を調べています。
(※ 外向性とは社会的に活動性が高く、他者とのコミュニケーションも積極的に取る特性で、神経症的傾向は不安やネガティブ感情が高い特性を指します)
では、結果を見てみましょう。
ゼロ年代生まれは「独り身」の満足度が高い
データ分析の結果、1991〜1993年生まれの青年期と2001〜2003年生まれの青年期を比べてみると、2001〜2003年生まれの方が交際・結婚を含めて、独り身でいる割合が高いことがわかりました。
また、2001〜2003年生まれの方が独り身でいることへの満足度も高くなっていました。
その一方で、生活全般への満足度はどちらのグループでも差はありません。
しかしながら、年代ごとの「20代の成人形成期(グリーン)」と「30代の成人確立期(ブルー)」を比べても、独身状況や生活全般への満足度に時代的な変化は認められませんでした。
この結果は、2001〜2003年生まれの若者と、それより一昔前に生まれた世代との間に、独り身であることに対する考え方や満足度に大きな違いがあることを示唆しています。
これはゼロ年代生まれの若者たちが、心が発育する敏感な時期に、スマホやノートPC、SNSの普及といった急速な社会変化にさらされており、対面でない多種多様なコミュニケーションがごく自然なものとなっているためか、独り身であることをすんなり受け入れやすくなっている可能性を示しています。
この他にも、現在の若者はYouTubeやサブスク、ゲーム、漫画といった一人で余暇を過ごす方法が充実しているため、パートナーがいなくても寂しくないのかもしれません。
しかし、こうした年代ごとの全体的な傾向が見つかった一方で、性別や年齢、性格特性などの個人的要因も有意に関与していることがわかりました。