生物のように歩くテーブル「Carpentopod」
カルパンティエ氏の歩くテーブル「Carpentopod」の名称は、古いラテン語とギリシャ語「carpentum(乗り物)」と「pod(足または脚)」の組み合わせから来ています。
そして、Carpentopodもまた、ヤンセン氏のストランドビーストからインスピレーションを受けています。
Carpentopodのリンク機構が、「ヤンセンのリンク機構」と非常によく似ていることから、そのことが理解できるでしょう。
ただし、Carpentopodでは、ヤンセン氏のリンク機構と比べて、各骨組みの比率が異なっており、ジョイントも追加されています。
またCarpentopodのつま先は丸みを帯びています。
これらつま先の丸みや骨組みの比率は、カルパンティエ氏が作成したソフトウェアによって生み出されました。
このソフトウェアは、数々の脚のバリエーションを互いに競わせ、歩行速度や材料、滑らかさ、上下動の観点で、最善の脚のパラメーターが生き残るようにしました。
このパラメーターはいわば「遺伝子」のようなものですが、ソフトウェア上では、数あるバリエーションのうち優れた遺伝子が混合され、新しい世代が生み出されます。
そして新たな世代では、同様の過程により再び優れた遺伝子だけが選び出され、混合。より優秀な遺伝子を作り出しました。
また定期的に、「遺伝子変異」とも呼べる新たなバリエーションが導入され、進化の幅を広げるようにしました。
最終的に、動画で示されるように、ソフトウェア上で何千もの仮想世代が過ぎた結果、1つの「最適解」が生み出されました。
このCarpentopodにはこの「最適解のリンク機構」が導入されており、ヤンセンのリンク機構と比べて、つま先の接地面のズレやスピードの不一致からくる「足の滑り」が少なくなっています。
この足の滑りがあると、それぞれの脚において互いを減速させる動きが発生するため、歩行がスムーズになりません。
Carpentopodでは、その無駄な動きができるだけ排除されており、より滑らかで生物のような動きが生み出されます。
(ストランドビーストの脚では、この影響を低減するために、硬いつま先ではなく、柔らかいつま先、もしくは転がるタイプのつま先で作られていることが多いようです)
さらにCarpentopodでは、つま先が優しく地面に触れて、下方向に強く押さないよう設計されています。
これはCarpentopodが歩き回る時、テーブルがあまり上下動しないことを意味します。
上に物を置くテーブルである以上、たとえ歩いたとしても揺れないことが大切なのです。
そしてCarpentopodは2つのセクション(1セクションに6本の脚)に分かれており、それぞれ独自のモーターによって駆動します。
この異なったモーターを使い分けることで、向きを上手に変更することも可能です。
Carpentopodの操作には、ゲーム機「Wii」のコントローラー「ヌンチャク」が利用されており、ゲームのキャラクターを操作するかのように自由に行えます。
まるで生きているかのように滑らかに動くテーブルの存在は、私たちの生活をいっそう楽しく、ワクワクさせてくれますね。
いずれテーブル以外にも、生き物のような家具が誕生するかもしれません。
椅子、本棚、冷蔵庫、食器棚にも命が吹き込まれ、それらが歩いている世界を見てみたいものです。