生物のような動きを追求する
「生物のような動き」を再現する芸術で有名なのは、彫刻家テオ・ヤンセン氏が製作する「ストランドビースト」です。
ストランドビーストは、プラスチック材料で作られた作品ですが、風の力を受けて、まるで生きているかのように歩くことができます。
その「生物らしさ」は、ヤンセン氏が設計した特殊な機構「ヤンセンのリンク機構(Jansen’s linkage)」によってもたらされています。
これは、ヤンセン氏がコンピュータシミュレーションによって発見したものです。
1本の脚につき11本の骨組みがそれぞれ適切な長さで組み合わさることで、円を描くような柔らかな動きを生み出すことができるのです。
そして6本足のアニメーションから分かる通り、中心の軸を回転させるだけで、全ての足が滑らかに動き、歩行させることができます。
ヤンセン氏は、このストランドビーストを改良し続けており、現在でも彼の様々な作品を見ることができます。
一方で、ヤンセン氏のストランドビーストやリンク機構にインスピレーションを受けた人々も多くいます。
例えば、オランダの家具デザイナーであるウーター・シューブリン氏は、ストランドビーストの動きに少し似た「歩くテーブル(ウォーキングテーブル)」を開発しました。
彼の開発したリンク機構は、ヤンセンのリンク機構とは異なるものの、どこか生き物らしさを感じます。
ちなみに、このウォーキングテーブルは、自力では歩くことができず、人間が押すことで「生き物みたいに」移動してくれます。
またストランドビーストのような作品の別の例として、エンジニアのギリアム・ド・カルパンティエ氏が作成した歩くテーブル「Carpentopod」が挙げられます。
彼の作品は、ヤンセンのリンク機構を用いつつ、進化させたものであり、シューブリン氏のウォーキングテーブルよりもいっそう滑らかな動きが可能です。
さらに人間が押す必要は無く、モーター駆動により自力で歩くこともできます。
まさに、「疲れているから動きたくない。テーブルが歩いてきて」なんて言ってしまう人にぴったりなアイテムです。
では、カルパンティエ氏の「Carpentopod」は、どのようにして生み出されたのでしょうか。