超音速を破壊的なソニックブームなしに実現する技術を開発
超音速を破壊的なソニックブームなしに実現する技術を開発 / Credit:Boom Supersonic
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超音速を破壊的なソニックブームなしに実現する技術を開発

2025.02.14 23:00:08 Friday

かつて「超音速飛行=ソニックブーム」は切り離せない関係と考えられていました。

音速(マッハ1)を超えると発生する衝撃波は、地上まで届くほどの大音響を伴い、窓ガラスが割れるなどの被害をもたらすこともあります。

このため、コンコルドのような超音速旅客機は海上を中心に運航するしかなく、陸上での高速移動は実現が困難だとされてきました。

しかし最近、航空技術の新たなブレイクスルーが「超音速飛行はうるさい」という従来の常識を覆そうとしています。

アメリカの航空ベンチャー企業・Boom Supersonic社が開発した実験機「XB-1」が、地上にソニックブームを響かせることなく音速の壁を突破したと報告したのです。

彼らはこの「静かな超音速飛行」を可能にする仕組みを「Boomless Cruise」と名付け、背後には“大気の屈折”を利用した「マッハカットオフ」という重要な物理現象が存在すると説明しています。

このニュースが注目を集めるのは、もし騒音問題が克服されれば、陸上でも超音速移動が解禁される可能性が出てくるからです。

長年、超音速旅客機の普及を阻んできた最大の障壁であるソニックブームが抑えられれば、世界中の航路で高速化が一気に進むかもしれません。

本記事では、こうした新技術の概要とマッハカットオフのメカニズム、さらに最新の実験結果や今後の展望について解説していきます。

詳細はBoom Supersonic社のホームページにて公開されています。

Boom Supersonic Announces Boomless Cruise https://boomsupersonic.com/press-release/boom-supersonic-announces-boomless-cruise

音速と衝撃波の歴史

超音速を破壊的なソニックブームなしに実現する技術を開発
超音速を破壊的なソニックブームなしに実現する技術を開発 / Credit:Canva

音速飛行は、かつてコンコルドが実現したように大きな期待を集めましたが、その際に問題となったのがソニックブーム(衝撃波による大音響)です。

陸上を飛行した場合、爆音のような衝撃音が地表に達し、住民への騒音被害や建物への影響が懸念されました。

実際にコンコルドは乗客に支持されたものの、運航コストの高さや騒音規制などの課題が重なり、2003年に退役を余儀なくされました。

以降、ソニックブームをどう抑えるかが超音速機開発の大きなテーマとなりました。

とくに陸上での超音速飛行が各国の法律で厳しく制限されています。

もし何も対策せずに地上で超音速飛行を行い衝撃波を発生させれば、どんなヒーローもきっと逮捕されてしまうでしょう。

「地上に騒音を響かせない超音速旅客機」の実用化は長らく“技術的かつ規制的”なハードルとなってきたのです。

こうした背景のもと、米国コロラド州を拠点にするベンチャー企業「Boom Supersonic社」は、次世代超音速旅客機の開発に挑戦している企業の一つです。

同社は将来的に「Overture(オーバーチュア)」という世界最速の旅客機を商業化することを目標としており、そのための実験機が「XB-1」です。

XB-1は、超音速飛行時の騒音や飛行特性を実地で検証する目的で開発されました。

近年報告された実験では、音速の壁を突破したにもかかわらず、地上でソニックブームがほとんど観測されなかったという結果が得られ、大きな注目を集めています。

Boom Supersonic社は、この「静かな超音速飛行」の実現を“Boomless Cruise”と呼び、将来の旅客機オーバーチュアにも搭載する計画を進めています。

さらに、Boom Supersonic社は、高度な大気予測と飛行速度制御を組み合わせることで、マッハカットオフ現象を利用し、「陸上でもソニックブームが届かない超音速飛行」を目指しています。

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