初期の宇宙飛行で起きたトイレ問題の悲劇
1961年5月5日、ソ連のガガーリンより1カ月遅れて、アメリカ人では初めてアラン・シェパードが宇宙へ行きました。
このときの宇宙旅行は、ほんの15分程度の弾道飛行によって宇宙へ出るだけだったので、トイレが必要とは想定されていませんでした。
しかし、シェパードがロケットに乗り込んでから打ち上げは3時間以上も遅延したため、長い待ち時間の間に彼は催してしまい、1度ロケットを降りてトイレに行きたいとミッション・コントロールに相談しました。
けれどこのとき彼の体にさまざまな機器が繋がれていて、1度ロケットを降りことはかなりの手間でした
そのため時間を惜しんだミッション・コントロールは、宇宙服の中でしてしまえ、と彼に指示したのです。
こうして彼は宇宙服の中をおしっこで湿らせたまま、アメリカ人初の宇宙飛行をすることになりました。
シェパードにとっては災難でしたが、このことで人類は宇宙飛行におけるトイレの問題に気づき、宇宙飛行士はオムツをするようになりました。
最初からオムツくらいしておけよ、と思ってしまいますが、失敗しないと人間は気づかないものなのです。
さて、それから少し時間は流れ、もっと高性能なジェミニ宇宙船が登場します。
この宇宙船は、2週間もの宇宙飛行を可能としました。
当然、本格的な宇宙のトイレも必要となったのです。
しかし、ジェミニ宇宙船は二人乗りで非常に狭かったため、個室のトイレというものは用意されませんでした。
このときの宇宙のトイレは、座席に座ったまま漏斗型の吸引器を使って小便は船外へ排出し、大便はプラスチックバッグに入れて防腐剤とこね回して倉庫に保管するという方法が取られました。
けれど、この初期の宇宙トイレはトラブルが続き、吸引器がうまく付けられず尿もれが発生し、さらには大便のバッグが破裂して船内に漏れ出すという悲劇が起こりました。
そのためジェミニ搭乗員のラヴェルは、地球帰還後メディアに宇宙旅行の感想を聞かれた際、「君はトイレの中で一週間過ごしたことがあるかい?」と毒づいたそうです。
その後も、宇宙のトイレはなかなかうまく行きませんでした。
2000年には、宇宙ステーションにもきちんとしたトイレが設計されましたが、男性用に設計されていたため、基本的に立ったまま使用するスタイルで、女性飛行士には使いづらいものでした。
大便については、太腿をストラップで止めて便座とお尻をしっかりと密着させて使用するものでしたが、これもあまりうまく機能せず、清潔に使うことは困難だったといいます。