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境界性パーソナリティ障害では、脳が自分の視点と他人の視点を混同していると判明 / Credit:Canva,ナゾロジー編集
psychology

境界性パーソナリティ障害では脳が「自分から見た自分」と「他人から見た自分」を混同している

2024.10.03 Thursday

気持ちや行動、対人関係が不安定になりやすい「境界性パーソナリティ障害(または「ボーダー」とも呼ばれる)」の人は、人口の2%ほど存在すると言われています。

近年では、この言葉を耳にすることも増え、人々の理解も増してきました。

自分の親族や友人が境界性パーソナリティ障害ではないかと疑っている人もいることでしょう。

では、どうして境界性パーソナリティ障害の人は、多くのトラブルを抱えてしまうのでしょうか。

最近、韓国の釜山大学校(PNU)心理学部に所属するセユル・クァク氏ら研究チームが、境界性パーソナリティ障害の人の脳活動を測定し、その特徴を明らかにしました。

この研究によると、彼らの脳は、自分の視点と他人の視点を区別して考えることができないという。

つまり、「自分が自分のことをどう思っているか」と「他人が自分のことをどう思っているか」を混同しているのです。

研究の詳細は、2024年9月7日付の学術誌『Psychiatry Research: Neuroimaging』に掲載されました。

Blurry boundaries: How the brain confuses self and others in borderline personality disorder https://www.psypost.org/blurry-boundaries-how-the-brain-confuses-self-and-others-in-borderline-personality-disorder/
Borderline personality trait is associated with neural differentiation of self-other processing: A functional near-infrared spectroscopy study https://doi.org/10.1016/j.pscychresns.2024.111882

境界性パーソナリティ障害とは

境界性パーソナリティ障害(BPD:borderline personality disorder)とは、感情の不安定さや対人関係の問題が特徴的な精神疾患です。

この障害を持つ人は、極端な感情の揺れや強い不安感、自己像(自分が自分をどう思うか)の不安定さを抱え、拒絶されたり見捨てられたりすることに対して過敏に反応します。

「境界性」の由来は、「神経症」と「統合失調症」という2つの精神疾患の境界にある症状であることから来ています。

例えば、境界性パーソナリティ障害の患者に見られる「強いイライラ」は神経症的な症状であり、「現実を冷静に認識できない」という症状は、統合失調症的なものです。

この障害は、「境界性パーソナリティ障害」という名称以外にも、英名から「ボーダーライン」「ボーダー」と呼称されることもあります。

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境界性パーソナリティ障害の患者は親しい人との関係を損なう傾向にある。「見捨てられる」と感じ、強い怒りをぶつけてしまうことも / Credit:Canva

正式に診断されていない人も含め、境界性パーソナリティ障害を患っている人は人口の2%ほど存在すると考えられており、自分の家族や友人がこれに該当すると感じている人も少なくありません。

この障害を持つ人は、家族や友人、職場の人など、自分と親しい人に対して、「自分は見捨てられてしまうかもしれない」と強く感じる傾向があります。

そのため、親しい人からの連絡が少しでも遅れたり、約束をキャンセルされたりすると、パニック状態に陥り、激怒します。

感情をコントロールできず、返事が来るまで何度も連絡したり、相手に怒りをぶつけて攻め続けたり、破壊行為・自傷行為に走ったりします。

では、境界性パーソナリティ障害の人は、どうしてこれほどまでに不安を抱えやすく、過剰に反応してしまうのでしょうか。

これまでの研究により、これらの症状の原因は、自分と他人の視点を正確に区別できないことから生じていると考えられています。

しかし、この認知的な混乱を測定することは困難でした。

そこで今回、クァク氏ら研究チームは、近赤外光によりの血流の変化を測定する「fNIRS」を用いて、境界性パーソナリティ障害の患者の脳活動を測定し、どのような特徴があるのか調べることにしました。

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