境界性パーソナリティ障害とは
境界性パーソナリティ障害(BPD:borderline personality disorder)とは、感情の不安定さや対人関係の問題が特徴的な精神疾患です。
この障害を持つ人は、極端な感情の揺れや強い不安感、自己像(自分が自分をどう思うか)の不安定さを抱え、拒絶されたり見捨てられたりすることに対して過敏に反応します。
「境界性」の由来は、「神経症」と「統合失調症」という2つの精神疾患の境界にある症状であることから来ています。
例えば、境界性パーソナリティ障害の患者に見られる「強いイライラ」は神経症的な症状であり、「現実を冷静に認識できない」という症状は、統合失調症的なものです。
この障害は、「境界性パーソナリティ障害」という名称以外にも、英名から「ボーダーライン」「ボーダー」と呼称されることもあります。
正式に診断されていない人も含め、境界性パーソナリティ障害を患っている人は人口の2%ほど存在すると考えられており、自分の家族や友人がこれに該当すると感じている人も少なくありません。
この障害を持つ人は、家族や友人、職場の人など、自分と親しい人に対して、「自分は見捨てられてしまうかもしれない」と強く感じる傾向があります。
そのため、親しい人からの連絡が少しでも遅れたり、約束をキャンセルされたりすると、パニック状態に陥り、激怒します。
感情をコントロールできず、返事が来るまで何度も連絡したり、相手に怒りをぶつけて攻め続けたり、破壊行為・自傷行為に走ったりします。
では、境界性パーソナリティ障害の人は、どうしてこれほどまでに不安を抱えやすく、過剰に反応してしまうのでしょうか。
これまでの研究により、これらの症状の原因は、自分と他人の視点を正確に区別できないことから生じていると考えられています。
しかし、この認知的な混乱を測定することは困難でした。
そこで今回、クァク氏ら研究チームは、近赤外光により脳の血流の変化を測定する「fNIRS」を用いて、境界性パーソナリティ障害の患者の脳活動を測定し、どのような特徴があるのか調べることにしました。