不気味の谷は人間だけのものなのか

映画やゲームで、かなりリアルに作り込まれた人間のCGを見て、なんとも言えない不快感を覚えたことはないでしょうか。肌の質感も、まつげの1本1本も完璧に見えるのに、なぜか怖い。笑っているはずなのに、笑っていないように見えるのです。
不思議なのは、もっと出来の悪いCGなら平気だということです。ドラえもんもミッキーマウスも、リアルさで言えばはるかに人間から遠いのに、誰も気味悪がりませんし、むしろ愛されています。
つまり「リアルに近づくほど好かれる」という単純な話ではないのです。ある一点まで近づいたところで、好感度は崖から落ちるように急降下します。そして完全に本物と見分けがつかなくなると、今度はまた戻ってくるのです。
この現象には、ちゃんと名前があります。「不気味の谷」——1970年に日本のロボット工学者・森政弘が提唱した仮説です。グラフに描くと好感度の曲線が途中でV字に深く落ち込むため、「谷」と呼ばれています。
半世紀にわたって、これは人間の心の話として語られてきました。人がCGを見て「気持ち悪い」と答えたり、ロボットに不安を覚えたり——どれも、言葉で気持ちを報告できる相手が前提だったのです。
ここで、素朴な疑問が浮かびます。これは、人間だけのものなのでしょうか。
もし他の動物にも同じ谷があるなら、この現象は「CGを見慣れた現代人の気分」などではなく、脳の奥に埋め込まれた仕組みだということになります。
実は、サルの「顔」については以前から報告がありましたが「サルの視覚的注意は不気味の谷に落ちない」という真逆のタイトルの論文も存在しており、決着はついていなかったのです。そして「体」に至っては、そもそも誰も調べていませんでした。
そこで今回研究者たちは、この謎を解明すべく、高精細なCGのサルを作り上げました。
そのこだわりは細部にまで及びました。
予備実験でサルたちが観察対象の「お尻」を熱心に見ていたことが判明すると、チームはその部位まで解剖学的に正確に作り直しています。
サルの目が審判なのですから、サルが気にするところは手を抜けません。






























