「不気味の谷」は、人間だけのものではなかった

今回の研究により、サルの視線もまた、人間で報告されてきたのとよく似た形の谷を描くことがわかりました。
半世紀のあいだ、私たちはこれをCGを見慣れた現代人の気分の問題だと思ってきました。
ですが今回の研究が示したのは、それが人間だけのものではなかった、ということでした。
研究者たちは、不気味の谷はヒトとサルに共通する性質である可能性があると述べています。
そう考えると、「不気味の谷」について意外に知られていない事実が、急に重い意味を帯びてきます。
実は1970年に森政弘が不気味の谷を提唱したとき、彼がグラフに並べた例は「顔」ではありませんでした。
産業用ロボット、人型ロボット、ぬいぐるみ、人形、そして実在の人物——すべて、まるごとの「体」だったのです。
森の仮説は、もともと身体の知覚について定式化されたものであり、今回の論文も、その原グラフをもとにした図を掲載する際に、はっきりそう記しています。
ところが、その後の議論は「顔」へと吸い寄せられていきました。
目が死んでいる、笑顔がぎこちない——谷といえば顔の話になっていったのです。
論文に載っている森政弘のグラフには、その一番深い谷底に、具体例が書き込まれているのです。
「死体」と。
森政弘が谷底に置いたのは、顔ではなく、動かなくなった、まるごとの体でした。
そして今回、8頭のサルの視線が最も避けた谷の底にいたのは——毛も、色も、質感も失われた、灰色の、同種の体だったのです。
今回の研究はその一致について明確な断定は行っていませんが、興味深い重なりと言えるでしょう。
マカクザルとヒトが進化の道を分けたのは、およそ2,500万年から3,000万年前とされています。
次にリアルすぎるCGキャラクターを見て、あの説明しがたい「ゾワッ」を感じたとき——それは2,500万年前までさかのぼる霊長類の脳の性質が、今もあなたの中で静かに警報を鳴らしているのかもしれません。






























