サルも「不気味の谷」を感じていた

高精細なCGモデルが用意されると、次に研究者たちはそれを「劣化」させた3バージョンを作りました。
もっとも単純なのは、陰影も奥行きもない、白い背景の上に、細かな網目だけで描かれたモデル①です。
次は、滑らかな表面で覆われた灰色のモデル②です。
そして3つ目は、毛皮だけを取り除き、肌の色と質感は残したモデル③です。
こうして研究者たちは、最高精度のCGに3種類の劣化CG、そして最後に実写を加えた5種類を、動画と静止画の両方で用意しました。
リアルさを低い順から並べれば
①網目だけ➔②灰色一色➔③色彩あり➔④超高精細➔⑤実写
となります。
準備が整うと研究者たちは、これらを8頭のアカゲザル(マカクザルの一種、オスで5〜7歳)に実際に見せて、その視線を調べました。
私たちは、興味のあるものをよく見て、なんとなく嫌なものからは目を逸らします。
サルの心理研究でも以前から、「どれだけ頻繁にそれを見るか」が、そのサルがどれだけそれを好んでいるかの目印として使われてきました。
結果、一番リアルな実写は最もよく見られ、一番リアルさが低い網目だけのモデルもよく見られていました。
しかしその間にある「灰色のモデル」は5段階中で最も見られていなかったのです。
そして結果をグラフにすると、きれいなU字が現れました。
単純なものと本物が好まれ、中間が嫌われるという「不気味の谷」と一致する結果が得られた瞬間でした。
しかしなぜ、一番リアルさが低いものより、リアルさを足したほうが避けられたのでしょうか?
研究者たちは考えうる説明を片っ端から潰していきました。
1つめは「動きが不自然だから気持ち悪いのでは?」というものでした。
しかし全てのCGの動きは全く同じです。また研究者たちが静止画を使った時も、谷は消えませんでした。つまり動きは不気味の谷の原因ではなかったのです。
2つ目は「灰色が地味で、単に目立たなかっただけでは?」というものです。
そこで研究チームが画像の明暗のコントラスト、輪郭線の数、細かい模様の量、そして「どこが目を引くか」を計算で割り出す指標——考えうる限りの手がかりを、手当たり次第に解析したのです。
結果、灰色が地味という説も否定されました。
3つ目は「顔が変だったからでは?」というものです。
不気味の谷といえば、まず顔が疑われます。死んだような目、ぎこちない笑顔。ですが実は今回の研究では、すべての映像で顔にぼかしがかけられていました。
動きでも、色でも、顔でもない。サルたちは「不気味の谷」を体のみで感じていた証拠です。






























