量子力学を「虚数なし」で書き直すことに成功──実数で綴る量子の世界
量子力学を「虚数なし」で書き直すことに成功──実数で綴る量子の世界 / Credit:Canva
quantum

量子力学を「虚数なし」で書き直すことに成功──実数で綴る量子の世界

2026.06.22 20:00:29 Monday

ドイツのハインリヒ・ハイネ大学デュッセルドルフ(HHU)とドイツ航空宇宙センター(DLR)の研究によって、量子力学は虚数を一切使わず、実数だけでも書けることが示されました。

この実数版は、複数の粒子がからみ合う実験まで含めて、考えうるすべての量子実験について、従来の量子力学とまったく同じ結果を予言します。

しかも今回は複数の量子がからみ合う場面まで、ほころびなく成立していました。

シュレーディンガーが方程式に虚数を書き込んでから約100年、虚数は量子世界に欠かせない部品だと信じられてきましたが、その常識が、いま大きくゆらいでいます。

私たちが量子力学の”本体”だと思っていた虚数は、便利な”文法”にすぎなかったのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年6月18日に『Physical Review Letters』にて発表されました。

Braucht die Quantenmechanik komplexe Zahlen? https://www.hhu.de/news-einzelansicht/braucht-die-quantenmechanik-komplexe-zahlen?utm_source=chatgpt.com
Quantum Mechanics Based on Real Numbers: A Consistent Description https://doi.org/10.1103/4k13-sdjh

虚数を「柱」にしたのは量子力学だけだった

画像
Credit:Canva

ニュートンの運動方程式、マクスウェルの電磁気学、アインシュタインの相対性理論――。

物理学の歴史を彩る大理論は、どれも「実数」だけで書くことができます。

もちろん計算の途中で虚数が顔を出すことはあります。

電気回路の計算では複素数が頻繁に登場しますし、波の干渉を扱うときにも便利な道具です。

しかしそれはあくまで「近道」であって、最終的な答えはいつも実数に戻せました。

虚数はいわば「足場」のようなもので、建物が完成すれば外してしまっても問題はなかったのです。

ところが、量子力学だけは事情が違いました。

量子の世界を記述するシュレーディンガー方程式には、虚数単位 i が方程式の骨格そのものに組み込まれています。

計算の便宜ではなく、理論の構造の一部として。

物理学の長い歴史のなかで、虚数を「足場」ではなく「柱」として必要とした理論は、量子力学だけだったのです。

では、虚数は量子世界そのものに埋め込まれた部品なのでしょうか?

それとも、量子世界をもっとも読みやすく表現するために人間が選んだ、優秀な記述法にすぎないのでしょうか?

次ページ虚数とは何か ── ありえない数の正体

<

1

2

3

4

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

量子論のニュースquantum news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!