選択的繁殖では何ができる?
今回の画期的な研究はニューカッスル大学のコーラルアシストラボ(Coralassist Lab=サンゴ支援研究室)の主導で実施されました。
研究チームが熱に強いサンゴを生み出すために採用した「選択的繁殖」は、人類が何千年、何万年と前から実践してきた方法です。
例えば、私たち人間のベストパートナーである犬。
犬は約2〜4万年前の間にオオカミの一部から進化したことがわかっています。
その発端は人間のコロニーに近づいて、食べ残しなどを漁っていた比較的穏やかなオオカミの一群にあります。
次第に人間はこの友好的なオオカミたちと深く交流するようになり、グループの個体同士をかけあわせることで子孫を繁殖させました。
すると普通のオオカミにはない「穏やかな形質」が選択的に子孫に受け継がれ、大人しいオオカミ、つまりは犬が誕生したのです。
チームはこの選択的繁殖の方法を用いることで、サンゴの熱耐性を世代ごとに高められるのではないかと考えました。
人為的な活動により年々加速する温暖化のせいで、地球の海はどんどん熱くなっています。
その悪影響は「海のオアシス」たるサンゴ礁にも出ており、集団的な死滅現象が各地の海で増加しているのです。
そこでチームは選択的繁殖により熱に強いサンゴが生み出せるかどうかを検証してみました。