光の力で回転する歯車
歯車はあらゆる機械の中核的な部品です。
その起源は古く、最古の歯車は紀元前150~100年に制作された「アンティキティラ島の機械」と呼ばれる天体の動きを調べる計算機の一部だったと言われています。
現代においても歯車はあらゆる機械に使用されており、ミニ四駆や時計などでも、モーターやゼンマイの力をタイヤや針に伝達するための手段として、歯車が中心的な役割を果たしています。
人類の暮らしを大きく変えた産業革命が成し遂げられたのも、歯車の仕組みがあったからだと言えるでしょう。
しかし機械の小型化が進みマイクロメートルからナノメートルに達すると、限界がみえてきました。
微小な機械に組み込まれた歯車を動かすには、マイクロモーターのような極めて小型化された動力も必要です。
歯車の小型化は比較的簡単ですが、複数の部品を必要とする「モーター」をマイクロサイズにするのは非常に困難だったからです。
また既存の歯車を使った仕組みでは、動力を始点(最初の歯車)から終点(最後の歯車)へ伝達させることは得意でも、間に存在する個々の歯車を独立的に動かすのは困難でした。
この限界を突破するには、歯車とモーターの役割を一体化させ、エネルギーを注入された歯車自体が回転力を生み出せるような仕組みが不可欠です。
「そんなのは無理だ」と思われるかもしれませんが、そうでもありません。
たとえば歯車の形を工夫して風車のように外部からのエネルギーを直接回転力に変換する仕組みを作れば、始点となる歯車自身が回転力を発揮することが可能です。
(※風力発電では向かってくる風を、風車を使って横方向の回転力に変換しています)
ただマイクロサイズの世界では、風力はあまりアテにできません。
風力は方向のコントロールが難しく、すぐに分散してしまうからです。
そこで今回、ヨーテボリ大学の研究者たちは「風の代りに光を受けて回転する歯車」を作ることにしました。