光の回転で歯車を制御する
一般的な風車に当たる風は自然現象であるため、基本的には制御することはできません。
これは風車の役割が風の力から電力を取り出すことを主眼に置いているためです。
しかしマイクロ歯車の場合は逆に、光を浴びせて歯車を回すことに主眼を置いています。
また風車と違い、微小な歯車に当てる光は人間によるコントロールが可能です。
そこで研究者たちは、当てる光の性質を変化させることで、歯車の回転を制御できると考えました。
光には、上の図のように、単純な上下の波として振動しているものの他に、振動する山のピーク部分が時間経過と共に右回り、あるいは左回りになっているものも存在します。
このような光の波の回転が起こる状態を「偏光」が起きていると言い、特に回転が起きている状態を「円偏光」と言います。
通常の光が波のように見えるとすれば、円偏光を起こしている光はスクリュー状になっていると言えます。
風で例えるならば、右回り(あるいは左回り)に回転しながらやってくる風と言えるかもしれません。
風車であれば、このような特定の回転方向を持つ風が当たった場合、羽の向きによって回転を加速させることが可能になります。
たとえば左向きに回転しやすい羽をもつ風車に、左向きに回転する風が当たった場合には回転を加速させ、逆に右向きに回転する風をあてた場合に減速させることができます。
前半の歯車が真っすぐに来る光の運動方向を逸らして(偏向させて)動力とすれば、ここは光の偏光状態を利用して動力にしていると言えます。
(※偏向は光の運動方向を変えること、偏光は光の角運動量を変えることと解釈できます)
新たな研究では、この仕組みを円偏光を用いて再現することに成功しました。
上の図では回転方向が中立な光では歯車が回転しないものの、右回りの光を浴びせられると右側に回転し、左回りの光を浴びせると左側に回転する歯車が示されています。
既存のモーターを使った回転制御では、電流を流す方向を変えたり、モーター自体を別のものに変えるなどの操作が必要となりますが、新たな光駆動の歯車は、浴びせる光の種類を変えるだけで回転方向を自由に変えられるのです。
しかも動力を伝達するのにシャフトなどの物理的な接触も必要ありません。
このような物理的接触に依存せず回転できる仕組みは、より小型の機械を駆動させるのに大いに役立つでしょう。
また研究では、歯車の回転を直線運動に変換する機械についても実証実験を行い、予想通りに機能することも示されました。
研究者たちは、この技術を使えば、直径10μm以下のモーターを作ることも可能になるだろうと述べています。