なぜ130年間も見つからなかったのか?
「もし130年間、誰も見たことがない生物が、ひっそりと生き延びていたとしたら?」
そんな疑問を抱かせる今回の発見は、単なる生物学の話にとどまらず、自然の神秘を象徴するものです。
今回の話の主役となるのは「アルソデス・ヴィタトゥス(Alsodes vittatus)」というカエルで、最初の個体が見つかったのは1893年のこと。
フランス人の昆虫学者、フィリベール・ジェルマンによって発見されました。
その後、その模式標本をもとに詳細な調査が進められ、1902年に新種のカエルとして科学的に記載されています。
本種は背中に白または黄色の縦線があることが特徴で、複数回の目撃例が報告されました。

しかし次第に目撃例が途絶えていき、ついには全く見つからなくなったのです。
1995年から2002年にかけて複数の研究者が本格的な捜索を試みましたが、いずれも失敗に終わり、専門家らは「絶滅した可能性が高い」と考えるようになりました。
こうしてアルソデス・ヴィタトゥスが姿を消してから130年が経過することになります。
では、なぜこれほど長い間、このカエルは見つからなかったのでしょうか?
大きな理由の一つは、最初の模式標本が採取された「場所」の情報があまりにも曖昧だったことです。
当時の記録には、本種が正確にどこで採取されたのかが書かれておらず、チリ中南部という漠然とした広い範囲を手当たり次第に探すしかなかったのです。
しかし、その努力はついに報われることになります。