「生命の源が“ダイヤモンド製造マシン”に変身する日

ふだんの生活で見かける水は、ただの透明な液体であり、“生命の源”として穏やかなイメージを持たれています。
しかしもしその水を、地球の奥深い地下や海王星・天王星の内部にあるような、数万気圧・数千度という超高圧・高温の極限環境に放り込んだらどうなるでしょうか。
なんと水は一変して“超酸”という、とてつもなく攻撃的な性質を帯びる可能性があるのです。
ここではただの水が、炭化水素(たとえばメタン)にプロトン(H+)を次々と押しつけて結合を変化させ、最終的にダイヤモンドのような固体炭素を形づくるかもしれない――これが「ダイヤモンドの雨」という仮説です。
実は常温常圧の世界でも、「超酸」と呼ばれる非常に強力な酸を使うとメタン同士を結合できる現象が昔から知られていました。
たとえば1960~70年代、ジョージ・オラーらの研究グループはフッ化アンチモン酸(SbF 5/HF)のような超酸溶液を使い、メタンにプロトンを与えるという、通常では考えられない反応を起こしてみせたのです。
これにより、炭化水素がどんどんつながっていくという驚きの結果が得られました。
しかし、「常圧の超酸」ができるなら、「超高圧・高温で電離した水」も同じようなことを起こせるのではないか――その可能性は長いあいだ想像の域を出ず、実験的に証拠をつかむのが難しかったのです。