軽ダンベルで筋肥大――最新研究で重さ神話崩壊
軽ダンベルで筋肥大――最新研究で重さ神話崩壊 / Credit:Canva
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軽ダンベルで筋肥大――最新研究で重さ神話崩壊 (2/3)

2025.06.09 22:00:09 Monday

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軽すぎて笑った? それ、筋肉つきます

軽すぎて笑った? それ、筋肉つきます
軽すぎて笑った? それ、筋肉つきます / Credit:Canva

研究チームは、週2回の脚の筋力トレーニングを9週間続けてもらう実験を行いました。

参加者は平均26歳の男女14名で、全員が日頃からレジスタンストレーニング(筋トレ)をしているトレーニング経験者です。

ユニークなのは、そのトレーニング方法を左右の脚で変えたことです。

各被験者は片脚では高負荷トレーニング(3~5回持ち上げるのが限界の重量=3~5RM)、反対側の脚では低負荷トレーニング(20~25回が限界の重量=20~25RM)を行いました。

どちらの脚も毎回「自力で持ち上げられなくなるところまで」反復し、セット数も左右で同じになるよう組まれました(つまり高負荷の方は少ない回数×高重量、低負荷の方は多い回数×低重量となります)。

トレーニング種目は脚全体の力を鍛えるレッグプレス(多関節運動)と、太もも前面の力を鍛えるレッグエクステンション(単関節運動)の2種目です。

それぞれの脚について、開始前と9週間後に筋力と筋持久力、それから筋肉量や筋細胞の変化を測定・解析しました。

結果、筋力と筋肥大の面で軽い負荷トレーニングは重い負荷トレーニングに匹敵する効果を発揮することが示されました。

多関節種目であるレッグプレスの最大挙上重量(1RM)は、軽負荷・高負荷のどちらの脚も約21%増加し、両者に有意差はありませんでした。

また太ももの筋厚も超音波で計測しましたが、どちらの脚も7~8%程度の同程度の増加を示しました。

一方、レッグエクステンション(単関節種目)の筋力については高負荷トレーニングを行った脚のほうが上昇幅が大きく、軽負荷より優れていました。

興味深いことに、筋持久力(一定の軽い重量で何回持ち上げられるか)は軽負荷脚は+9 %、逆に高負荷脚は−2.7 %とわずかに悪化しており、持久力面では軽負荷のほうが効果的でした。

要するに、筋肉量については軽い負荷でも十分増やせ、筋力も複数の関節を使うような大きな動作であれば重い負荷の場合と同程度まで高めることができたのです。

(※もっとも、これらは 見た目の太さや体積増加を示す代表指標ではあるものの、筋内水分や結合組織の変動を完全に除外するわけではない点にも留意が必要です。)

一方で、種目によっては依然として高負荷の利点も見られました。

筋肉内部の変化を見るために、被験者の大腿筋から筋肉組織の生検も行われました。

筋線維のタイプ(遅筋線維・速筋線維の割合)や各筋線維の太さには、どちらのトレーニング脚でも有意な変化は認められませんでした。

しかし、筋肉の幹細胞といわれる「サテライト細胞」の数は変化が見られました。

サテライト細胞は筋線維の成長や修復を助ける細胞で、トレーニング刺激に応じて増減します。

今回の実験では、サテライト細胞の数が遅筋線維で約25%増加しており、これは高負荷・低負荷いずれの脚でも同様でした。

言い換えれば、サテライト細胞の増加は筋線維の種類によって起こりましたが、負荷の重さには左右されなかったということです。

なお、筋線維に含まれる核(マイオニュークレイ)の数はわずかに減少傾向(約6〜8%)でしたが、大幅な変動とは言えませんでした。

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