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Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
insect

史上初「星空」を読んで1000キロも旅できる昆虫を発見!

2025.06.19 23:00:32 Thursday

春の夜空に、驚くべき旅をする小さな昆虫がいます。

その名は「ボゴン・モス(Bogong moth)」と呼ばれる小さな蛾。

わずか5センチの体に、米粒の10分の1ほどの脳を持ちながら、この蛾は星空を「地図」にして、なんと1000キロもの道のりを目的地に向かって正確に飛び続けていたのです。

南オーストラリア大学(UniSA)の研究チームによると、ボゴン・モスは星空を目印に長距離移動をする史上初の昆虫とのことです。

研究の詳細は2025年6月18日付で科学雑誌『Nature』に掲載されました。

Stargazing flight: how Bogong moths use the night sky to navigate hundreds of kilometres https://www.unisa.edu.au/media-centre/Releases/2025/stargazing-flight-how-bogong-moths-use--the-night-sky-to-navigate-hundreds-of-kilometres/ Tiny Moth Seen Navigating by The Stars in Scientific First https://www.sciencealert.com/tiny-moth-seen-navigating-by-the-stars-in-scientific-first
Bogong moths use a stellar compass for long-distance navigation at night https://doi.org/10.1038/s41586-025-09135-3

「星を読む虫」夜空に導かれる神秘の大移動

オーストラリアの春。

気温が上がり始める頃、南東部一帯の大地から、無数のボゴン・モスがいっせいに羽ばたきます。

その数、毎年数十億匹。

目的地は同大陸の東海岸にあるオーストラリアアルプス山脈の冷たい洞窟です。

彼らは夏の間そこで「夏眠(aestivation)」と呼ばれる休眠状態に入り、秋になると再び南東部へ戻って繁殖し、命を終えます。

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ボゴン・モスと季節移動の図解、一番右は夏眠の様子/ Credit: David Dreyer et al., Nature(2025)

ボゴン・モスの寿命は1年ほどなので、長距離移動をして洞窟に行くのは生涯に1度きり。

つまり、全員が初めての長旅なわけですが、なぜ彼らは一度も訪れたことのない洞窟に正確に辿り着けるのでしょうか?

長年、この謎に挑んできたのが、動物のナビゲーション能力を研究する今回のチームです。

チームはこれまでの研究から、ボゴン・モスが地球の磁場を利用する「磁気ナビゲーション」視覚的な手がかりとなる「星空の位置」の両方を使っていると推測していました。

そして今回の実験でチームは、磁場を無効化した状態でも、ボゴン・モスは星空さえあれば正確に進路を保てることを初めて実証したのです。

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実験の様子/ Credit: David Dreyer et al., Nature(2025)

チームは、磁場の影響を排除できる装置「ヘルムホルツコイル」を使い、真空チャンバー内に夜空の映像を投影。

星空があるとき、ボゴン・モスは季節にふさわしい方向(春なら南、秋なら北)に迷わず飛びました。

逆に、星空を180度回転させると、ボゴン・モスも180度方向を変えました。

一方で、星の位置を実際とは違い、ランダムに並べ変えると、ボゴン・モスの方向感覚は失われました。

つまり、ボゴン・モスは「星のパターンを読み取り、方角を決定していた」のです。

しかも、この行動は生得的なもので、生まれて初めて空を飛ぶ個体でも正しい方向をとれることが示されています。

次ページ星に導かれる驚異の脳コンパス

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