「体のパーツ」の価値ランキング、1400年前とほぼ同じと判明
「体のパーツ」の価値ランキング、1400年前とほぼ同じと判明 / Credit:Canva
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「体のパーツ」の価値ランキング、1400年前とほぼ同じと判明 (2/3)

2025.08.22 18:00:00 Friday

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1400年変わらない価値観

1400年変わらない価値観
1400年変わらない価値観 / Credit:Canva

研究チームはまず、文化や時代の異なる5つの法律を選びました。

1つ目は、今から約1400年前、紀元600年ごろのイングランドにあった「アセルベルヒト法」という古い法律です。

これは、ケント王国のアセルベルヒト王が定めた法律で、人にケガをさせた時の償いの方法が具体的に記されています。

2つ目は、13世紀のスウェーデンにあった「グータ法」という法律です。

これはスウェーデンのゴットランド島で使われていた法律で、やはりケガをさせた部位ごとに、支払うべき罰金や償いの金額が細かく決められていました。

残りの3つは、現在も使われている現代の法律です。

選ばれたのは、アメリカ合衆国のインディアナ州、韓国、アラブ首長国連邦(UAE)の「労災補償法」というものです。

労災補償法とは、仕事中にケガをした人がもらえる補償金の額を決めている法律です。

例えば、インディアナ州の法律では、腕や足を失った時にもらえる補償金の方が、指を一本失った時よりもずっと高く設定されています。

これは「腕や足の方が、生活への影響が大きい」と考えられているからです。

このように、古代や中世の法律から現代の法律までを比べることで、研究者たちは「体の部位ごとの価値に共通する基準があるか」を調べることができました。

次に研究チームは、「法律の専門家ではない普通の人たちも、法律と同じような感覚を持っているのだろうか?」という点を確かめようとしました。

法律を決めるのは専門家ですが、一般の人も法律と似た価値判断をしているなら、人間の心には普遍的な価値基準があるかもしれないからです。

そこで研究チームは、アメリカとインドで、18歳以上の一般の人614人を対象にアンケート調査を行いました。

調査では、参加者に体のいろいろな部位を示して、「もしこの部位を失ったら、生活がどのくらい不便になると思いますか?」という質問をしました。

また別の参加者には、「あなたが法律を作る立場なら、この部位を失った人にはいくらの補償金を支払うべきだと思いますか?」という質問をしました。

他にも「もし自分が誰かにこの部位を傷つけられたら、どのくらい怒りを感じますか?」といった質問もしました。

質問内容は少しずつ違いますが、どの質問も「その体の部位が失われることの深刻さ」を確かめるものです。

具体的に評価してもらった部位は、「腕」「足」「目」「耳」「鼻」「指一本」「奥歯一本」など、古今東西の法律に共通して登場するさまざまな体の部位です。

これによって研究チームは、「法律と一般の人々の直感的な感覚がどれくらい似ているか」を比較できました。

その結果、とても興味深いことがわかりました。

一般参加者が直感的に下した判断と、各時代・各地域の法律で定められた補償の額には驚くほど共通する傾向があることがわかりました。

つまり、「どの部位がより重要で価値が高いか」という順位付けが、現代人の直感でも歴史上の法でもほぼ一致したのです。

また文化の違うはずのアメリカ人とインド人の回答も強く相関し、さらにそれらは中世ヨーロッパの法典や現代アメリカ・韓国・アラブの法律による評価とも一致しました。

例えば、論文では「親指は小指より重要」「目を失うことは奥歯を失うより深刻」と示されており、プレスリリースでも「人差し指は薬指より大事」「片目の損失は片耳の損失より重大」といった例が挙げられています。

さらに「親指と小指を比べたとき、どちらが重要と感じるか」という細かな比較についても、人々の直感と法の定める価値は概ね一致していました。このような傾向は統計的な解析でも有意な結果として裏付けられています。

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