人類の祖先は厳しい「ボトルネック」状態を体験した
現生人類は約30万年前にアフリカで誕生したとされています。
しかし、現生人類出現以前に人類の祖先がどのような過程を辿ってきたかについては、化石記録がほとんどないため多くが謎に包まれています。
そこで今回の研究チームは、人類自身の中に残されている進化の記録であるゲノムに着目し、アフリカ内の10の集団とアフリカ以外の40の集団からサンプルを集めて調査を行いました。
この研究では、子孫である我々の遺伝子配列の多様性を基に、現生人類の祖先を構成していた集団がどの程度の規模を持っていたか推定する方法を開発しています。
それによると、約93万年前から約81万3000年前にかけて、現生人類の祖先は厳しい「ボトルネック」状態を体験した可能性が高いことがわかったのです。
この該当する期間、人類の祖先集団は約98.7%が消失しており、絶滅の危機に瀕していたことが示唆されたのです。
このボトルネックとはどのような状態なのでしょうか。
ボトルネック効果とは
生物学的な文脈で語られるボトルネックとは、生物の集団が一時的に著しく少なくなる現象です。
この過程では、集団内の遺伝子の種類は極端に少なくなります。
その後、生物の個体数が回復しても、最初に失われた多くの遺伝子は戻らないため、新しい集団は遺伝的に似ている個体ばかりになります。
この効果をボトルネック効果、日本語で瓶首(へいしゅ)効果と呼びます。