約11万7000年もの間、人類は約1280人だった
研究チームのフー氏は、「私たちの祖先は長い間、厳しい状況に直面していました。人口が一時的に激減し、絶滅する寸前だったのです」と、語っています。
今回の研究によると、約11万7000年もの間、繁殖可能な人類の個体数は、約1,280人だったと推測されています。
しかし、なぜこんなにも人口が減少したのでしょうか。
研究者たちは、この人口激減の時期は、氷河が出現し、海水温が低下して、アフリカとユーラシア大陸に長期間の干ばつが起きた、深刻な寒冷化の時期と一致していると語ります。
そのため厳しい気候変動が人類祖先の個体数を大きく減少させた原因である可能性が高いと考えられます。
ただし、気候変動がどのように人類祖先に影響していたかについては、はっきりわかっていません。なぜなら、人口が極端に少なかったため、当時の人類の化石や遺物がほとんど見つかっていないためです。
これまでの研究で、現生人類、ネアンデルタール人、デニソワ人などが分岐したのは、約76万5000年から約55万年前の時期だったと考えられています。
この研究には参加していないロンドン自然史博物館の古人類学者クリス・ストリンガー氏は、「もしこれら旧人類の分岐がボトルネックの直後であった場合、現生人類、ネアンデルタール人、デニソワ人といった異なる集団に分かれるきっかけがこの人口激減にあった可能性が高い」と、指摘しています。
つまり、このボトルネックが起こった後、人類はいくつかの小さな集団に分かれていき、その後それぞれの集団が独自の進化を遂げた可能性があるのです。
過去の研究では、約90万年前から74万年前にかけて、2つの染色体が一つに結合し、現在の人類が持つ「2番染色体」が形成されたことが示されています。
この染色体の融合は、先ほど説明した人類の「ボトルネック」、つまり人口が急激に減少した時期と一致しているため、この二つの出来事が何らかの形で関連している可能性があると、研究者たちは考えています。
「ネアンデルタール人とデニソワ人もこの染色体の融合を持っているため、この現象は現生人類とこれらの集団が分岐する前に起きたと考えられます」と、ストリンガー氏は指摘しています。
ストリンガー氏はさらに、「今回の研究で開発された新しい分析手法が、将来的にネアンデルタール人やデニソワ人のゲノム調査にも適用できるかもしれない」と期待を寄せています。
それが実現すれば、ネアンデルタール人やデニソワ人のゲノムを通して、今回発見された人類祖先の急激な人口減少を調査することができ、この時期に何があったのか異なる角度から明らかにできるかもしれません。
今回の研究は、人類の起源と進化について新しいページを開いたと言えるでしょう。
人類のボトルネック効果の説明としてトバ・カタストロフ理論というのもあるけどそれとの整合性が気になる。100万年前に滅びかけたあと7万年前に再び滅びかけた、という理解でいいのかな。だとすると結構しぶといな、人類。