王族の墓から現れた「金の髪型」

1927年、イギリスの考古学者レナード・ウーリー卿は、イラク南部にある古代都市ウルの王墓地で、一つの不思議な兜を発見しました。
墓の番号はPG 755。
中に埋葬されていたのは「良き土地の英雄」を意味する名を持つ「メスカラムドゥグ(Meskalamdug)」という人物でした。
この兜は15カラットの金で作られており、その表面には緻密な彫刻が施されていました。
波打つ髪の束がリボンで結ばれ、後頭部では小さなお団子となって後ろに丸く膨らんでいます。
さらに耳の形も再現されており、聴覚を確保するための穴が開けられていました。
あご紐を通すための小さな穴も確認されています。
つまりこの兜は、単に金属製の防具ではなく、着用者の髪型や顔のパーツまでも模した、きわめて個人的かつ象徴的なアイテムだったのです。
しかも兜の内側には布製の内張りがあった痕跡も見つかっており、実際に被られていた可能性が高いと考えられています。
では、この奇妙な兜は、果たして誰のためのものだったのでしょうか。