「着る服がない」は、アイデンティティの不安と関係?
「着る服がない」という言葉は、しばしば軽く扱われます。
なぜなら、実際にはクローゼットの中に服が何枚も入っていることが多いからです。
しかし、この言葉が意味しているのは、必ずしも「服が一枚もない」ということではありません。
むしろ、「今の自分にしっくりくる服がない」という感覚に近いものです。
若い頃は自然に着られていた服が、ある時期から急に似合わないと感じられることがあります。
少し派手すぎる、若すぎる、地味すぎる、体の線が出すぎる、逆に形がぼやけすぎると感じることもあります。
この違和感は、単なる服選びの迷いではありません。
それは、年齢、体型、仕事、家庭環境、社会的な立場が変わっていく中で、「今の自分をどう見せればいいのか」がわからなくなる感覚でもあります。
研究チームは今回、英国在住の中年女性252人を対象に、服の選択肢への満足度、幸福感、加齢不安、外見不安、社会的回避などを調査。
その結果、服の選択肢への満足度は、幸福感を有意に予測する要因であることが示されました。
また、この関係の一部は、社会的回避によって説明されました。
つまり、服に満足できない女性ほど、人前に出る場面を避けやすく、その回避が幸福感の低さと結びついていたのです。
このモデルは、中年女性の幸福感のばらつきの約19%を説明していました。
これは「おしゃれをすれば幸せになる」という単純な話ではありません。
服は、外見を飾るためだけのものではなく、私たちが社会に出ていくときの心理的な足場にもなっているということです。
たとえば、服が体に合わないと感じると、人は自然と自分の見た目を意識し始めます。
服を直したり、体型を気にしたり、人からどう見られているのかを考えたりします。
その意識が強くなると、本来なら会話や仕事や楽しみに向かうはずだった注意が、自分の外見に向かってしまいます。
そして、その不快感が強くなると、「今日は行かなくてもいいか」と外出そのものを避けるようになる可能性があります。
この意味で、「着る服がない」という悩みは、ただの衣服の問題ではなく、社会参加のしやすさに関わる問題なのです。



























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