・11月に、宇宙へ巨大なアートである「反射物体」が打ち上げられる予定
・宇宙飛行士はこれに反対。その理由は「観測作業の邪魔になる可能性」と「宇宙ゴミを増やすべきではない」といったもの
地球の周りを回る「スペース・アート」を宇宙に打ち上げる計画を発表したベルリンの芸術家が、宇宙飛行士たちの怒りを買っているようです。
芸術家の名はトレヴァー・パグレン。彼はネヴァダ美術館と協力して、10年間そのアイデアを温めてきました。そのアイデアとは、30メートルもの巨大な「反射物体」を宇宙に打ち上げるといったもの。その動機は単にアーティスティックな欲求であり、人々が、およそ575キロメートル頭上に「光る物体」を楽しめるようにしたいといったものです。
ブリーフケースほどの小型サイズの人工衛星「キューブサット」の中に折り畳まれるこの「反射物体」。11月に打ち上げられる「ファルコン9」に、他の人工衛星とともに搭載される予定です。
彼はそのプロジェクトのウェブサイトにおいて、打ち上げの意義について述べています。「この物体が上空にあることで、人々は今までにない気持ちで夜空を見上げるでしょう。そして自分がいる場所が宇宙の一部であり、この星で私たちがどのように共存しているかについて、再び思いを巡らせることでしょう」
…と、ここまで聞けば夢のあるステキな話で終わりそうですが、この知らせを快く思わなかった人たちがいます。彼らの職業は「宇宙飛行士」。
今年のはじめ、アメリカの民間企業が似たようなコンセプトの人工衛星 “Humanity Star” を打ち上げて、宇宙飛行士の反感を買ったこと覚えている人もいるかもしれません。
宇宙飛行士たちが最も懸念するのは、そういった「輝く人工衛星」が天体観測の妨げになってしまうこと。動きが不規則なこのような衛星は、観測における問題を引き起こしてしまう可能性があるのです。
さらに、パグレン氏がデザインしたその「反射物体」は、打ち上げから数週間後に「宇宙ゴミ」となって大気圏に再突入する予定。オックスフォード大学の天体物理学者クリス・リントット教授は、このプロジェクトを「新たな公害」と一蹴しています。
さらに彼は、「これはパブリック・アートなんかじゃない。歓迎もされず、思いやりもない『空のラクガキ』です」として怒りをあらわにしています。今後こういった「宇宙アート」と「宇宙飛行士」の対立が、どのような経緯をたどるのかが注目されます。
via: iflscience / translated & text by なかしー