画像
成果バイアスの罠とは? / Credit:Canva
psychology

成功者の結果だけに注目してはいけない理由【成果バイアスの罠】

2025.10.01 06:30:36 Wednesday

ビジネスで大きな成功を収めた人の言葉は、どんなものでも正しいように聞こえます。

しかし、それは本当に正しい判断だったのでしょうか。

イギリスのランカスター大学(Lancaster University)の経済学者カルロス・アロス・フェラー教授は、「成果バイアス(Outcome bias)」という心理現象が、私たちの意思決定の評価を大きく歪めてしまうと警告しています。

Why You Shouldn’t Judge Decisions by Results Alone https://www.psychologytoday.com/us/blog/decisions-and-the-brain/202509/why-you-shouldnt-judge-decisions-by-results-alone

成果バイアスとは? どうして危険なのか?

ビジネスやスポーツ、日常生活まで、私たちはよく「うまくいったから良い判断」「失敗したから悪い判断」と考えてしまいがちです。

たとえば、大胆な決断で成功した経営者の話は、ニュースや本で繰り返し語られます。そんな「成功者の言葉」は、なんとなく正しそうに感じてしまいます。

でも、ここにある心理現象による落とし穴があります。

成果バイアス(Outcome bias)とは、人の判断や決断の良し悪しを、その結果だけで評価してしまう心理のクセです。

しかしこれは非常に危険です。

たとえば、こんなサイコロの賭けを考えてみてください。

「サイコロを振って6が出れば10万円もらえる。ただし参加料は5万円。他の目なら何ももらえない」

冷静に計算すれば6分の1しか勝てず、ほとんどの人が損をする「割の悪い賭け」です。

では、たまたま6を出して勝った人が「この賭けは最高だった!」と語れば、 まわりの人も「やっぱり思い切った行動が大事なんだ」と信じてしまうでしょうか。

「そんなことはない」と感じる人がほとんどでしょう。

しかし、状況がより複雑なビジネスの世界では、成果バイアスに抗うのは簡単ではありません。

たとえば、600人もの経営者が、深く調べもせずに大胆な事業投資をしたとします。

500人は失敗しその会社は倒産してしまいますが、100人は運よく成功し、その会社は一時的に大儲けしました。

そしてそれらの経営者だけがメディアに取り上げられ、彼らの手法がさも良かったように語られます。

この「成功した経営者」の言葉の影響を受けないようにすることは、簡単ではりません。

では、私たちがメディアでいつも見ている成功者たちは、本当の成功者でしょうか。

それともたまたま成功した人たちでしょうか。

このように、運よくうまくいった例ばかりに目を向けると、 「本当に良い決断」や「再現性のある考え方」が見えにくくなってしまいます。

こうした成果バイアスの影響は、実際の研究でも確かめられています。

次ページ研究が示す「成果バイアス」の証拠と、社会・自分への影響

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

心理学のニュースpsychology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!