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ステロイドの「やめ方」のアドバイスをネットに求める利用者たち / Credit:Canva
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筋肉増強剤ステロイドの”卒業”はネット任せ!?「危険な自己流」が広がる

2025.10.09 18:00:03 Thursday

世界大会に出場するような、異様に体が膨れ上がったムキムキのボディビルダーたち。

その背景に、筋肉増強剤、いわゆる「ステロイド」の使用が指摘されるケースもあります。

では、もしステロイド使用者が「やめたい」と思ったとき、どこに相談しているのでしょうか。

実は、医師ではなくオンラインの掲示板やフォーラムに頼る人が少なくないことが、最新研究で明らかになりました。

オーストラリアのグリフィス大学(Griffith University)の研究チームは、筋肉増強剤ステロイド使用者の「やめ方」情報がネット上でどのように共有されているかが詳しく調べられています。

研究の詳細は、2025年10月1日付の『Drug and Alcohol Review』誌に掲載されています。

Steroid users rely on risky online advice, not doctors, to quit https://newatlas.com/health-wellbeing/anabolic-androgenic-steroids-post-cycle-therapy-cessation/ Significant barriers to safe steroid discontinuation https://news.griffith.edu.au/2025/10/02/significant-barriers-to-safe-steroid-discontinuation/
Looking for the Best Way to Come Off Steroids Safely? Exploring Post-Cycle Therapy, Cessation, and Recovery Discourse and Practice in Australian Steroid Consumer Forums https://doi.org/10.1111/dar.70042

筋肉増強剤ステロイドの使用をやめる時に起きること

問題となる「ステロイド」は、炎症を抑える薬ではなく、筋肉を増やす目的で使われる筋肉増強剤ステロイド(アナボリック・アンドロゲン・ステロイド:AAS)です。

ステロイドは男性ホルモンのテストステロンに似た働きを持ち、筋肥大と回復を強く後押しします。

そのため競技者だけでなく、見た目の向上を目的とするジム愛好家の間でも使用が広がってきました。

ただし、日本やその他の国では、筋肉増強“目的”で承認された医薬品は存在しておらず、ネット経由の個人輸入や非正規ルートで入手したとしても、偽造品や品質不良のリスクが伴います。

日本のスポーツ庁も、健康被害の危険性とあわせて注意喚起を行っています。

こうした規制が示すように、ステロイドには大きな問題があります。

ステロイド使用中は外から男性ホルモンを入れるため、体が自分でホルモンを作らなくなるのです。

その状態で急にやめると、性欲や活力の低下、うつ状態、勃起不全、不妊、さらには筋肉の急減など、いわゆる離脱症状が出やすくなります。

この不調を軽くし、体のホルモン分泌を早く取り戻そうとして、利用者の間で広まっているのがポストサイクルセラピー(PCT)です。

PCTでは、本来は別の疾患に使う薬が自己流で用いられることがあります。

しかし、「どの薬を、どの量で、どのくらいの期間」という標準は確立しておらず、医療者側の知識や体制も十分とは言えません。

今回の研究は、こうした「やめ方」の情報が実際にどのように流通し、どんな考え方が共有されているのかを当事者の会話そのものから明らかにすることを目的としました。

研究チームは、オーストラリアのステロイド関連フォーラム3サイトから150スレッド、合計5059件の投稿を収集し、ヘルス・ビリーフ・モデル(HBM)という行動科学の枠組みで質的に分析しています。

HBMは、人が健康行動を選ぶときの「リスク認識」「行動のメリットと障壁」「行動のきっかけ」などを手がかりに、意思決定を読み解くためのモデルです。

では調査の結果、どのようなことが判明したのでしょうか。

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