たった10日間で有意に感情温度が変化
研究チームは、参加者に対して「相手の政党にどれくらい温かい感情を持っているか」を0〜100(百点満点評価)のスケールで答えてもらいました。
これは政治心理学でよく使われる「感情温度計(feeling thermometer)」と呼ばれる指標で、数値が高いほど相手を好ましく感じていることを意味します。
10日間の実験の結果、敵対的な政治投稿がタイムラインの上の方に集められるよう調整されたフィードを見たグループでは、相手政党への感情温度が平均2ポイント下がりました。
逆に、こうした投稿が下の方に追いやられ、目に入りにくくなるよう調整されたフィードを見たグループでは、平均2ポイント上がったのです。
変化量だけを見ると小さく感じるかもしれませんが、敵意を含む投稿の表示位置を少し操作しただけで、短期間で統計的に有意な感情変化が生じたという点が重要です。
研究者たち自身も、この2ポイントの変化が現実の社会的態度や行動の違いとしてどれほど表れるのか、また長期的な影響があるのかについては、今後の研究課題だと述べています。
とはいえ一般に政治的な態度は、数日や数週間ではほとんど変わらないと考えられています。
そうした性質をもつ指標が、10日という短い期間で有意に動いたという事実は、「アルゴリズムによる特定の投稿の露出の調整が、人の感情に影響しうる」ことを示す一つの証拠といえます。
ただし、ここから「今のXが実際にそのようなアルゴリズムを使っている」と結論づけることはできません。
今回の研究は、あくまで研究チームが独自に設計した投稿表示のルールを実験的に適用し、その影響を測ったものです。
現行のXの内部仕様がどうなっているかは、この研究からは分かりません。
それでも、「投稿の内容そのものは変えず、順番をいじるだけで感情が動く可能性がある」という今回の結果には、目を見張るものがあります。
たとえば、反ワクチン情報や陰謀論、特定の人物への批判が多い場面で、もし似たような投稿の表示調整が起きてしまえば、不信感や怒りが短期間で強まる可能性があります。
ここは論文が直接検証した範囲を超えるため、あくまで記事側の推測ですが、「何をどれくらい目立つ位置に置くか」が、私たちの感じ方を左右しうるという点では、同じ構造が働くと考えられます。
同時に、この仕組みは「危険」であると同時に「使い方次第の技術」でもあります。
敵意をあおる投稿を押し上げるアルゴリズムが分断を悪化させうるのだとしたら、その逆に、対話的で穏やかな投稿を少し優先表示することで、緊張を和らげる方向に働かせることも理論上は可能だからです。
今回の研究は、Xという一つのサービスを通じて、プラットフォーム側の協力なしにユーザーの実際のフィードを並べ替え、「アルゴリズムがユーザーの感情を変化させるかもしれない」という問題に、これまでよりも現実世界に近い条件で実験的に踏み込んだ試みだといえます。
私たちが毎日見ているタイムラインは、単なる情報の流れではなく、見えないルールで組み立てられた「環境」なのだということを、改めて意識させる結果になっています。



























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んなことより、単純に時系列で表示する機能がほしい。「おすすめ」ではなく「フォロー中」にしてても時系列じゃないので新しい投稿を全部読むにはずいぶんさかのぼらないといけない。