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複数のアイデンティティにはメリットがある / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
psychology

人が「いろいろな側面」を持つべき理由

2026.03.17 06:30:40 Tuesday

人は、状況によって振る舞いを変えています。

たとえば、職場では落ち着いて話す人が、親しい友人の前ではよく笑い、趣味の場ではまったく別の熱量を見せることもあります。

こうした違いは、単なるその場しのぎの演技というより、人のアイデンティティがもともと複数の側面からできていることの表れだと考えられています。

米ハーバード大学(Harvard University)医学部のエリザベス・マティアー氏は、脳科学、創造性、現代のアイデンティティの交差点を探る立場から、「人は一つの固定された自分だけでできているわけではない」と解説しています。

今回のテーマは、その複数の側面が、心の安定や柔軟さ、さらには創造性にも関わっている可能性がある、というものです。

Why You Don’t Have to Choose Just One Version of Yourself https://www.psychologytoday.com/us/blog/the-architecture-of-identity/202603/why-you-dont-have-to-choose-just-one-version-of-yourself
Acceptance and Commitment Therapy and Psychological Well-Being: A Narrative Review https://doi.org/10.7759/cureus.77705 Cross-domain analogical reasoning ability links functional connectome to creativity https://doi.org/10.22541/au.172165110.02797509/v1 Multiple Identities and Psychological Well-Being: A Reformulation and Test of the Social Isolation Hypothesis https://psycnet.apa.org/doi/10.2307/2095103

人はもともと複数の「自分」を持っている

私たちはつい、「本当の自分はどれなのか」と考えがちです。

けれど心理学では、人のアイデンティティは一枚岩ではなく、いくつもの側面が組み合わさってできていると考えられています。

たとえば、ある人は仕事では専門職として振る舞い、家では親や子どもとして生活し、友人の前ではまた別の顔を見せます。

さらに、趣味の場では走る人、音楽を楽しむ人、旅を愛する人としての側面が立ち上がるかもしれません。

こうした複数の顔は、ばらばらなものではなく、その人の全体を形づくる大切な要素です。

この点を社会学の立場から検討したのが、ペギー・ソイツの研究(1983年)です。

彼女は、人が持つ社会的な役割やアイデンティティが多いほど、心理的な苦痛が少ない傾向があることを示しました。

ここでいう役割とは、親、友人、同僚、地域の一員、趣味仲間など、社会の中で自分が占める位置のことです。

なぜそれが心の支えになるのでしょうか。

分かりやすく言えば、自分の土台が一つに集中しなくなるからです。

もし「自分は仕事で成果を出す人間だ」という一点だけで自分を支えていると、その領域でつまずいたときに、失敗以上の打撃を受けやすくなります。

仕事の問題が、そのまま「自分には価値がない」という感覚につながってしまうからです。

ですが、その人が同時に「家族の一員としての自分」「友人としての自分」「学び続ける自分」「趣味を楽しむ自分」も持っていれば、一つの領域が揺らいでも、自分全体まで崩れずにすみます。

つまり、複数のアイデンティティは、心への衝撃をやわらげる足場のような役割を果たすのです。

人は一つの肩書きだけでできているわけではありません。

そのこと自体が、実は大きな強みなのかもしれません。

複数のアイデンティティをもつメリットは他にもあります。

次ページ柔軟な自己は幸福度を高め、発想の幅も広げる

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