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マウスの再クローニングには限界がある / Credit:Canva, ナゾロジー編集
biology

「クローンからクローン」は58世代目が限界、”突然変異”が蓄積する

2026.03.26 20:00:23 Thursday

あるオリジナルの絵をコピーし、そのコピーをさらにコピーする、こうしたことを続けると画質が悪化し、元の絵からかけ離れていきます。

生き物のクローンでも、同じようなことは起こるのでしょうか。

山梨大学と放射線影響研究所の研究チームは、マウスのクローンをさらにクローン化し続ける「再クローニング」を20年にわたって行い、その限界を初めて詳しく調べました。

すると、再クローンマウスは見た目には正常でも、遺伝子発現には大きな違いが見られない一方で、DNAには突然変異が蓄積しており、58世代目でついに限界に達することが分かりました。

この研究は2026年3月25日、『Nature Communications』に掲載されました。

クローン動物からクローンを作ることには限界が! -哺乳類がクローン生殖できない理由が明らかに-(PDF) https://www.yamanashi.ac.jp/wp-content/uploads/2026/03/20260625.pdf
Limitations of serial cloning in mammals https://doi.org/10.1038/s41467-026-69765-7

クローンを“コピー”し続けることには限界がある

クローン技術には、昔から大きな期待が寄せられてきました。

優れた家畜を増やしたり、絶滅危惧種を残したり、病気や老化で不妊になった動物から子孫を残したりする手段になるかもしれないからです。

ですが普通のクローンには弱点があります。

元になる個体の細胞を使い切ってしまえば、そこで終わりです。

ずっと同じ個体の特徴を残したいなら、そのクローンからさらにクローンを作る必要があります。

これが「再クローニング」です。

理論上は、再クローニングがうまくいけば、同じ遺伝情報を持つ個体をいつまでも作り続けられるように見えます。

ですが研究者たちは、そこに不安を感じていました。

コピー機で写真を複写し、その写真の複製をまた複写することを繰り返すと、少しずつ画質が悪くなります。

同じように、クローンでも何かが少しずつずれていくのではないか、と考えたのです。

そこで研究チームは、2005年に1匹のメスマウスを選び、その体細胞からクローンマウスを作りました。

次に、そのクローンが成長したら体細胞を取り出し、また次のクローンを作ります。

これを3〜4か月ごとに繰り返し、20年間かけて再クローニングを続けました。

合計で生まれたクローンマウスは1206匹にのぼります。

研究者たちは、その間の成功率、体重、寿命、遺伝子発現、さらに全ゲノム配列まで調べました。

結果は、最初から悪化していく単純なものではありませんでした。

再クローンマウスの成功率は、第1世代の7.4%から徐々に上がり、26世代目には15.5%に達しました。

ところが、その後は低下に転じ、58世代目には0.6%まで落ち込みます。

しかも58世代目に生まれた再クローンマウスは生後数日以内に死亡し、ここが限界となりました。

不思議なのは、ここまで再クローニングを繰り返しても、生まれた個体は外見上は健康で、寿命も短くなっていなかったことです。

さらに、受精卵、第一世代のクローン胚、51世代目のクローン胚を比べても、遺伝子発現パターンには大きな違いが見つかりませんでした。

問題は別のところに潜んでいたのです。

次ページ見えないところで進んでいた“遺伝子の劣化”

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