モンドリアンの『New York City I』が数十年上下逆さまで展示される
この不思議な出来事の中心にあるのは、オランダ出身の画家ピエト・モンドリアンの作品《New York City I》です。
モンドリアンは20世紀を代表する抽象画家の1人で、縦線と横線、そして限られた色だけで世界の秩序やバランスを表そうとしたことで知られています。
現実の風景や人物をそのまま描くのではなく、もっと抽象的で普遍的な美しさを追い求めた画家でした。
そのため、彼の作品には空や地面のような分かりやすい目印がありません。
今回話題になった《New York City I》も、そうしたモンドリアン作品の特徴をよく示した1枚でした。

この作品は1941年の作で、モンドリアンが晩年にニューヨークで制作したものです。
この時期の彼は、街のリズムやブギウギ音楽の躍動感に刺激を受け、これまでの静かな幾何学模様よりも、もっと動きのある画面を目指していました。
さらに《New York City I》には、多くの作品とは異なった特徴があります。
色を施した細い紙片や接着性のある帯状素材が使われていたのです。
この作品を見ると、長いあいだ逆さまで展示されていても、すぐには気づかれなかった理由がすぐに分かります。
抽象画で上下が分かりにくく「正しい向き」を示す決定的な手がかりが乏しかったのです。
この作品はニューヨーク近代美術館で1945年に初めて展示され、その後は1980年からドイツのデュッセルドルフの美術館に所蔵されます。
そして数十年にわたり、《New York City I》は、上下逆さまの向きで展示されてきました。
美術館の学芸員たちも、この作品を見た人々も、だれもその誤りに気付くことはありませんでした。
しかし2022年、ある学芸員がこの作品のおかしな点に気づきます。

























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